恋人はサンタクロース

 宙に浮かせた足が勝手にプルプルと震えてしまい、自然と呼吸が荒くなる。
「あ、はあっはあっはあっはあっ、んっんっ、も、止めっ、止めてくださいっ……! か、感じるっ……! や、あっ」
「お、エロい声が出だした。つか、タマがパンティからはみ出し始めた。あと、チンポもデカくなってめちゃくちゃモリマンみたいになってる。ははっ、かっわいい股間」
「なにが、なにがかわいいっていうんですそんなっ……へ、変態ですおやぶんはっ!!」
「俺のどこが変態よ。かわいいっつってんじゃねえか。何がそんなに気に入らねえの」
 ぐっと言葉に詰まる龍宝だ。気に入る、気に入らないではなく言葉も最早見つからない。
 そのまま刺激を待っていると、本格的に舌でペニスを責め出してきて布地の上から突かれたり、舐められたりすると直接ではない、布地の上からのそれに言葉にしがたいような快感がやってくるのだ。
 折角の新品ショーツは、龍宝のカウパー液と鳴戸の唾液でぐしょぐしょに濡れそぼっていることだろう。
 そのうちに、緩やかな射精感がやってくる。
「んっはあっ、あっ、はあっはあっ、や、だめイキそうっ……! い、い、イキそうっ、おや、おやぶんイクッ……ああああイキそううっ!!」
「ん? イクか? べつにいいけど。後からまた勃たせてもう一回戦いくだけだし、イってもいいぜ。イキたきゃイキな」
「ああっ、そんな、そんなっ……こんな、カッコでイクなんてっ……!」
 すると、鳴戸は舌先を尖らせてペニスを突きながら淫猥に笑った。
「こんなカッコだから、イイんだろー? ほら、イけって。イっていいから。イっちまいな」
 しかし、下着が食い込むと思う。勃ったペニスが無理やり小さな布地の中に収まっているのだから当然なのだろうが、苦しい。だが、その苦しさも不思議と快感に変わってしまうから不思議なものだ。
 そのまま必死になって喘ぎ続けていると、とうとう強烈なまでの射精感に襲われ、足が勝手に持ち上がり、つま先だけはぴんとつったように真っ直ぐを向き、内ももだけはプルプルと細かく震え始める。
「はっやっ、や、やあっ! や、イク、イク、ホント、ホントにイクッ……!! ああああイック、イック!! イックうううっ!! やだああああっ、あああっあっあっあっあっ、おや、おや、おやぶんイック、イック、イックうううううっ!! あああああっああっあっあっああああああー!!」
 途端だった。ショーツの中でパンパンに膨れ上がっていたペニスが射精と共に飛び出てきて、それは鳴戸の顔にぺちんと音を立ててぶち当たり、おまけにザーメンまでもを鳴戸の顔に飛ばしながら射精してしまい、次々とぴゅっぴゅと飛びたくり跳ねたくって最後、ぴゅくっと先端から少しのザーメンを飛ばして、射精は終わったが、龍宝の気持ちは泣きたくなるほどに最悪だった。
「ううううっああああああっ……なんてっ、最悪の絶頂……親分の顔に、アレがぶつかるなんてっ……」
 顔を隠して涙を滲ませると、鳴戸が伸び上がってきて顔を隠した両手を退かしてキスを仕掛けてくる。
 いやがる龍宝だったが、まるで宥めるように優しく額や、頬などに口づけされ、最後に唇に飛び切り優しいキスが落とされ、涙を溜める龍宝の瞼にキスして頬を手で撫で擦ってくる。
「かわいくイけたな。なに、気にすることはねえよ。少なくとも、俺は気にしてねえ。それより……この服着たまま、抱きてえな。いい?」
 もはや、龍宝に答える権利などない。無言で頷くと、鳴戸はそのまま耳の後ろに顔を埋めてきて、ひたすら愛撫に溺れるよう、龍宝も鳴戸の背に腕を回して熱い抱擁に明け暮れるのだった。
 そして、事後。
 下着を一切、脱ぐことを許されなかった龍宝は、着た時のまま、ベッドの中で鳴戸の胸を枕に横たわっており、だがその頬は大きく膨らんでいる。
「おやぶん! あなたは変態です!!」
「へいへい、俺は変態ですか。そーですか。その変態にいろいろされて善がってたのは誰でしょうねー」
「こ、このド変態!!」
「かわいい、かわいい。何かに当たりたいんだな。分かるぜー、その気持ち。恥ずかしかったもんな。うんうん、でも、そんなお前も俺は好きだぜ」
 なにも言葉が出てこない。その代わりに、顔だけが熱くなってゆく。
「おやぶんの、ド変態!!」
「お、外見ろよ。雪が降り始めたみてえだぜ。ホワイトクリスマスってヤツだな。しかし、いいなー、本命がいるって」
 その言葉に、龍宝は慌てて顔を上げた。
「ほ、本命ってその……俺の、こと……?」
「お前以外誰がいるってんだい。いや、俺もいま初めて使った言葉だけど、好きなヤツが腕の中にいるっていいなと改めて思ってさ。クリスマスって、俺はあんまりいい思い出ってねえからなあ。だから、余計に浮かれちまったのかも。済まねえな、付き合わせちまって。つい浮かれちまった」
「おやぶん……」
 急にしんみりとする鳴戸に戸惑い、その顔を再び胸へと押し付け擦り寄りながら首に腕を巻きつける。
「俺で良かったら……いつでも、あなたのサンタクロースになります。……ですが、もうこんなカッコはゴメンですからね」
「えっ!? 来年はなに着せようか迷ってたとこなのに!!」
 と、そこで当たり前のように来年と言った鳴戸に少し笑ってしまう龍宝だ。
 きっと、鳴戸と一緒に居れば当たり前のように、月日は過ぎてゆくのだろう。二人で寄り添って、笑い合って、生きていく。
 窓の外を見ると、そこにはボタン雪のような大粒の雪が街を覆い、ガラスに映っているのは鳴戸と龍宝という、相思相愛の恋人同士の姿だ。
 些か龍宝の恰好が気まずさを感じさせるが、ぺたりと頬を広い胸へと貼り付けるとそれも苦にならなくなる。
 鳴戸の両腕は龍宝の背に回っており、優しいペースでゆっくりと背を撫でてくれ、その心地よさにもうっとりしてしまう。
 こんな日が、毎日当たり前のように続けばと、今は祈るばかりだ。

Fin.
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