純情を脱いだ日

 ベッドに仰向けに転がり、未だゆっくりとペニスを擦りながらどっぷりと快楽に沈む。
「はあっはあっ……ああ、あああうイっちまった……はあっ、おやぶん……」
 目を瞑り、思い浮かべることは鳴戸とのキスで必ず、龍宝がイクとキスをしてくれるのだ。そんな妄想を繰り広げながら、鳴戸とキスした感覚を思い出す。
 湿っていて柔らかい咥内に舌。それに、鳴戸は咥内も熱いので口のナカを探られると龍宝の咥内まで熱が乗り移ったように熱くなる。
 それがまた、気持ちイイのだ。
 口のナカを愛されている妄想に塗れながら、全身をベッドに預ける。射精による心地よい倦怠感が身を包み、どうしても起き上がる気になれない。
 そのままベッドに沈んでいると、手に吐いたザーメンの存在が気になりだした。においも然り、手が粘つくのだ。
 仕方なく起き上がり、全裸のまま洗面台まで行って水で手を清める。そういえば、今は一体何時なのだろう。リビングに引き返し時計を確認すると時刻は午前七時四十分を指している。
 起きるには早い。だったら、二度寝を決め込むのも手だ。どうせ身体も程よく怠いし、ちょうどいいだろうと下穿きすら穿かずにベッドの中へと潜り込む。
「……鳴戸おやぶん……」
 ぽつっと鳴戸の名を呟き、そっと目を閉じてやって来る眠りの波に攫われる龍宝だった。
 次に目を覚ましたのはなんと、昼過ぎといった時刻で今日は組に顔を出すことになっている。何時とハッキリ決めているわけではないので関係ないと言えば関係は無いのかもしれないが、鳴戸が既に来ているかもしれない。
 慌ててベッドから起き上がり、朝のシャワーを浴びに浴室へと足を運ぶ。既に全裸だったのでそのまま熱い湯を頭から浴び眠気を追い出すようにシャンプーから始める。
 全身清め、暫くシャワーの湯を楽しむと次は腹が減ってくる。
 浴室から出てバスタオルで身体の水気を取り、そのまま濡れたバスタオルを腰に巻き付けて台所へ立つ。
 冷蔵庫の中の食料は乏しかったが、それでも何とか見繕って食事を済ませ、整容に入る。あまり外見にはこだわらないようにしてはいるが、しかし鳴戸が組にいるとすればべつの話だ。きれいに頭を撫でつけ、後ろの髪を流しカッターシャツを着込む。
 龍宝のお気に入りはストライプのスーツなのでそれを身に着けると、支度は整ったことになる。だがあと一つ、拳銃を懐へ入れると完璧だ。
 いつ狙われても対処できるようにしておくのが龍宝のやり方なので拳銃の所持は外せない。これも気に入っている拳銃で、すっかり手に馴染んでしまった。
 服装と装備の最終チェックを済ませ、玄関扉を潜り鍵をしっかりとかけて階下へと降りる。かなり背の高いマンションなのでエレベーターが設置されているがそれを使ったことは無い。鍛えるつもりでいつも階段を使って上り下りをしている。小さなことからコツコツと、とは一体誰が言った言葉だろうか。
 そのまま車へ乗り込み、組事務所へ向けて出発だ。
 この時間だと鳴戸もすでに来ているのではないか。鳴戸がいるというだけで、勝手に心が躍ってしまう。だらしのない顔になっていないか、引き締めつつ車を飛ばす。
 しかし、どこかスッキリしないと思う。
 今朝になって鳴戸とのアレコレする夢を見たからか、自分で発散してもし切れていない性欲が頭を擡げており、考えないようにしてきたがどうにも治まらない。
 二度寝すれば大抵、いつもだったら身体が落ち着いてくれるが稀にこういう時がある。稀に、というほどでもないが、特に鳴戸の夢を見てしまうと必ず欲しくなってしまう。
 これには閉口するが、それも仕方のないことだと半分諦め、後の半分は嫌悪に似た感情が心を支配し、やるせない気持ちにさせられる。
 性欲は男にも女にもあるが、龍宝は自分のことをつい最近まで淡白だと思っていた。少なくとも、鳴戸とそういった関係になる前までは。
 一度抱き合ってしまえば初めから惹かれてはいたがまるで雪崩のように気持ちが鳴戸に傾いてゆくのが分かった。そして、抱かれてしまえば最後。いつだって鳴戸が欲しいし、抱かれるとこれ以上なく幸福な気分にもなることができる。
 この中毒性は異常で、自慰も一月に一度、または二月くらい放っておいてもなんともなかったペニスが、鳴戸に抱かれて愛されてからやたら快感に貪欲になり、一週間に最低でも二度ほど射精してやらないと身体はいつだって疼くようになる上、傍に鳴戸がいるだけで勃起してしまうほどにまで欲しくなってしまうので、最近は欲望に逆らわず溜まったら鳴戸に訴え抱いてもらうというルーティンができつつあるのが最近の二人だ。
 鳴戸に言うと、困った顔は見せるものの断られたことは一度もなく、言えば必ずその晩はホテルへと向かい、熱い鳴戸を受け入れながらイかせてもらっている。
 正直、鳴戸のその困った顔を見るといつも後悔の念が先に立つが、どうしても鳴戸で無ければ埋められない穴もあると、これも最近知った。
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