優しい誘惑

 どことなく悔しい気分になるが、気持ちイイものは結局なにがあっても気持ちイイのだ。
 夢見心地でキスに溺れていると下半身が気になってくる。
 意識せず、もじっと腰が動いてしまうとまたしてものどの奥の方でくくっと笑われたのが分かった。
 仕返しのつもりで鳴戸の舌を捉え、少し強めに食むと宥めるようにゆっくりと舌を舐められ、ちゅっ……と音を立てて唇が離れてゆく。
「はあっはっはっ、おや、ぶん……ん、はあっ」
「前、キツイか。そりゃそうか。ははっ、我慢も快感のうちってな。よーしよしよし、イイコちゃんしてやろうな、ココも」
「んっ……おやぶんっ」
 思わずのどを反らせてしまう。というのも、いきなりタマをぎゅっと掴まれ揉みしだかれたからだ。そこがダイレクトに感じる部位だと思っていなかったが、改めてこうして大きな手で刺激されるといかにソコが感じるかよく分かる。
 たまらなくなり、椅子の上を滑りひっしと鳴戸にしがみつく形で首に腕を回し抱きつく。
「ははっ、甘えやがって。気持ちイイか」
「い、イイッ……イイ、です、すごくイイッ……はあっ、おやぶんっ」
 鳴戸の両手はしっかりと龍宝のペニスを掴み、片手はタマにそして片手はペニスを本格的に責めにかかってきて、ボディソープがいい潤滑液になりにゅるにゅるとサオ含め亀頭が撫で繰り回されたり上下に扱かれ半泣きで善がる龍宝だ。
 如何せん、気持よすぎる。
「んあっ、ああっ! あっあっあっあっ! あぁっ、おやぶん、親分おやぶんっ! き、きもちいっ!」
 かなり、限界に来ている。
 特に亀頭をいじられると快感がモロに股間に拡がり下半身にどんどんと熱が溜まっていき、射精感に繋がるそれに歯を食いしばってなんとか暴発に耐える。
「んっんっ、おやぶんおやぶんっ! あっあっ、い、イクッ……! い、イキそうっ、い、イキそうっ! い、いいですかイってもっ、イっても!」
「んー? そうさなあ。ま、べつに無理にガマンさせることもねえか。夜もあるしな。よし、イってもいいぞ、許す。イけ、龍宝! 気持よくイっちまえ!」
 タマを揉んでいた手は根元へと添えられ、両手べつべつの動きで責め立てられてしまい、亀頭を下から上へ扱くように動き、もう片手はサオを中心に激しい動きで上下に擦ってくる。
 この二点責めに、龍宝は自分の限界を感じていた。
 特に亀頭を捏ね繰り回されるように刺激されるとただそれだけでもイってしまいそうに感じる。ぐりぐりと鳴戸の頭へ頭突きするように擦り寄り、短く浅く息を吐きながら射精に備える。
「はっはっ、おやぶんっ、おやぶんイクッ! ああああイクッ!! イっちまううううっ!!」
「だーからイけって。なにも我慢するこたねえよ。ほら、こうすればイクか? んっ?」
「ああああっ、うううううー!! やっ、それっ、それっ、ああああっ!!」
 きっちりと根元を固定されたと思ったら、やたらと亀頭ばかりを揉むように扱かれてしまい、快感で目の前がちかちかと光り始める。こうなれば、絶頂はもうすぐ目の前だ。
 今度こそ本気でイかせようとしているのか、親指と人差し指で亀頭を挟み潰すように刺激してきたらもう最後だ。
 快感が、下半身で爆発する。
 頭の中が真っ白にスパークし、後にぶわっと熱いような快感が下半身を支配したと思ったら、それらはすべてペニスに集中し、とうとう待望の絶頂だ。
「うああああ! あああっ、ああああイック、イック、イックうううっ!! ああっあっあっあー!! あああああっ!!」
 ビグンビグンと身体が痙攣し腰が捩れ動き、びゅびゅっと勢いよく鈴口からザーメンが吐き出され、それらはすべて鳴戸の手に飛び、何度にも分けてのそれに龍宝は夢見心地で鳴戸に抱きつきながら射精の快感に浸る。
「はあっ、は、はあっはあっ……い、イった、イっちまった……はあっ、ふうっ、おやぶん……」
 甘えた声で名を呼ぶと、そっと首から手が外され両手を恋人繋ぎにされたと思ったら優し気に笑む、鳴戸の男らしく整った顔が近づいてくる。
 そっと眼を閉じると、額や頬に柔らかなものが押し当たり後、唇にふわっと温かく湿ったものが触れる。そして唇を舐められ、龍宝もつられて舐め返すと応酬になり、互いの舌を舐め合ったり食み合ったり、唾液を啜り飲んだりと散々、激しいキスを愉しみ唇を離す。
「は、はっ……おやぶん、すき……」
「かーわいいなあ、お前は。そうやって言われるたび、なんか知らんが頭の芯がじーんとするんだよな」
「鳴戸おやぶん……すきです」
「うんうん、分かった。よしよし、気持よくイって未だ飛んでんだな。かわいいかわいい」
「かわいくない……」
「そういうところが、かわいいんだよ。さて、身体洗い直して風呂行こうぜ。折角の夕焼けだ。お前と見たい」
「ん……未だ離れたくないです」
「わがまま言ってんじゃないっての。ほら、離れる」
 するりと手が離れて行ってしまい、鳴戸は勝手にシャワーの湯で両手を洗っている。その背に、龍宝は抱きつく形でしがみつく。
「おやぶんっ! 俺は、本気ですよ。本気で、親分のこと……あなたのことを」
「分かったって。いいから離しな。ここへ来た意味が無くなっちまうよ。その話は、また後でな」
 腕を捻じ曲げて頭を撫でられ、仕方なく離れると両手で頬を包み込まれ唇に柔らかな口づけが降ってくる。
「お前の気持ちは、分かってるし伝わってるからよ。安心しな。俺はどこにも行かねえ」
「どういう、意味」
「そういう意味だ。さーて、龍宝また背中流してくれるか。汗かいちまった。身体キレーにしたらゆっくり浸かり直そうぜ。折角の風呂だ」
 龍宝は背中全体に入っている刺青を眺めつつ、いま鳴戸が言ってくれた言葉の真意を探していた。
 一体、どういう意味を含めての言葉なのだろう。
 疑問は潮風に吹かれ、二人の身体を心地よく冷やしていくのだった。

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