さよならだけが眠る頃

 それでも、止めて欲しいと何故思わないのだろう。痛くてたまらないのだが、いつまでも自分の血を舐めていてもらいたい。それが、鳴戸の腹の中に入るのなら本望だ。
 熱くなった身体を押しつけるよう、さらに強く腕を回してしがみつくと鳴戸の手が頭を抱えるようにして回り、上下にゆっくりと髪を撫でられる。
 その仕草の優しさに、涙が瞳からつつっと零れ頬を伝う。
「はあっ……おやぶん、好き……お慕い、しています。ずっと、あなたを」
「龍宝、あのな」
「いいんです、返事は期待してません。ただ、言いたくなっただけです。続きがあるのなら、続けてください。俺の言うことはすべて、無視してくれていいので、続けてください。ソノ気に、なって……愛して」
「龍宝っ……!」
 さらに力強く抱き込まれ、肺が圧迫されて苦しいが今はとにかく喜びの方がなによりも勝る。龍宝もがっしりと鳴戸の背に腕を回し一部の隙間もないほどに抱きしめ合い、身体を絡め合う。
 痛いくらいに熱い身体だ。そして、硬い。男の身体だと思うが、鳴戸だと思うだけで釣られて龍宝も身体を燃やしてしまう。
 触れている部分から熱が伝わり、身体中が火照ってくる。
 暫く硬く抱き合っていた二人だが、徐々に鳴戸の手が不穏に動き出し、龍宝の締まった尻を両手で鷲掴み、揉みたくってくる。
「お前の尻、揉みごたえあるな。カタチもいいし、いい尻だ」
「あ、あっ……! や、恥ずかしいです、あの、おやぶんっ!」
「なーに照れてやがんだ。だったら、これはどうだ?」
 尻を揉んでいた手は龍宝の頬を包み込み、目の前には優しく笑んでいる鳴戸がいる。思わず龍宝も笑顔になり、大きな手のひらの感触を堪能するように目を閉じる。
「頬が、あたたかい……」
「また泣いてんのか」
 首を横に振るが、何故か涙が止まってくれないのだ。すると、頬をすりすりと柔らかく撫でられ、もはや夢見心地でその気持ちよさを堪能する。
「親分の手は、不思議です……。ささくれ立った気持ちが、だんだん解けていって……もう、何も要らないくらい、満たされた気持ちにさせてくれる。大好きな、手です」
「好きなのは、手だけか?」
「えっ……? んっ、ん」
 頬を包まれながら手で顔をくいっと上向かされると、ふわっと唇に優しくて温かく、そして湿った感触が拡がる。鳴戸の唇だとすぐに気づき、龍宝も角度を変え自分から口づけるとそれを合図のようにして、交互に口づけることを繰り返す。何度も何度も、触れ合う唇は優しく龍宝を溶かしてゆく。
 そのうちに、舌で口をノックされたので半開きにするとするっと咥内に鳴戸の舌が入り込んでくる。その口づけに応えるよう、龍宝からも舌を伸ばして鳴戸のソレと絡め合わせて舌に乗った唾液を啜り飲む。
「ん、んっく、んっ、んんっ……は、は」
 すると鳴戸も同じように龍宝の唾液を咥内から奪うように吸い取り、飲み下したようだ。それからは応酬になり、ぬるぬると舌と舌を舐め合い柔く噛んだり突いたりと様々な愛撫を愉しみ、それだけでは飽き足らず歯列もなぞり、頬の内側や舌の下まで愛撫したりとかなり濃厚で濃密な口づけに溺れる。
 すると、だんだんと身体に力が入らなくなってきてしまい、鳴戸に縋るようにして唇を一旦離す。
 そして、降参の合図も兼ねた懇願を口に乗せる。
「はあっはあっ、も、止めてください。か、感じます。感じてしまう……! おかしく、なりますっ……!」
「そりゃ結構。なるならなっちまえ。ベッド行くぞ。動けないなら連れて行く」
「連れて……? あっ!」
「掴まんな。落としても厄介だ」
 がっちり鍛えてある龍宝の隆々しい身体を、鳴戸は尻を腕と手で支え持ち上げてしまう。これには驚きを隠せない龍宝だ。前々から逞しい身体をしてはいる鳴戸だが、結構な重量のある龍宝をなんと、持ち上げてしまうとは。
「おっ、親分っ! 降ろしてください自分で歩けます!」
「いいからいいから。お、ちょっとドア開けてくれねえか。両手が塞がってる」
 片手は鳴戸の背に回し、もう片手で浴室の扉を開けると勝手知ったるでそのままずんずんと部屋の中を歩いて行ったと思ったら、まるで投げ出すようにしてベッドの上へと放られる。
「うあっ!! お、おやぶん危ないっ!」
 ベッドのスプリングがぎしっと音を立てて軋む。そしてすぐにでも覆いかぶさるようにして迫ってきて、片手で首を引き寄せられたと思ったらすぐにでも口づけが降ってくる。
 戸惑うこともなく応えた龍宝は鳴戸の首に両手を巻きつけ、触れるだけの口づけを何度も繰り返す。
 そのうちにだんだんと激しさが増してゆき、それを合図のようにして口を開けると咥内に鳴戸の舌が入り込み、舌の上をべろりべろりと大きく幾度も舐められる。龍宝も舐め返し、ぢゅるぢゅると音を立てながら濃厚な口づけに溺れてゆく。
 舌を舐めるのに飽きると、今度は柔く噛み合いが始まり痛くない程度に舌を食む。咥内に溢れる二人分の唾液を啜りのどに通すと、鳴戸もそれを追うようにしてのどを鳴らしている。
 なんという官能的な口づけなのだろう。身体の芯に熱が灯り、それから一気に身体に火がついたように欲情がやって来る。
 息を乱しながら熱い口づけに溺れていると、緩やかにペニスが勃ち上がってくるのが分かった。身体全体で、鳴戸を欲しているのだと思うと何故だか悦びの心が芽生えてくる。
 首に絡めていた手を外し、下に持って行って鳴戸の下半身を確かめてみるとすぐに熱いなにかが手に当たり、少しぬるついているそれがペニスだと分かると反射で握ってしまっていた。
 ぴくっと、鳴戸の身体が動く。感じたのだろうか。

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