み空色のまどろみ


 暖かな陽ざしが降り注いでいるみ空色の昼下がり。イチョウ商会はいつものように、ギンガ団本部の脇で商いを営む。いつもなら通りすがりの人に「目玉商品、入荷してますよ」と声をかけるのだが、今日はどういうわけが人通りが少ない。ここから見えるイモヅル亭の亭主も表に出て首を捻っているほどだ。まあ、理由がなく客が少ない日もたまにはあるだろう。
 さて、どうしたものか。余っている材料を使ってクラフトでもするか? ムラの外に仕入れにでも行くか? たまにはお得意様に挨拶回りでもするか?
 ぼんやりとした頭の片隅で午後の予定を考えていると、ふわりとした感触が足元を横切った。

「ん? コリンク、どーした?」

 上半身の青い体毛と、下半身の黒い体毛。星の模様が入った丸く大きな耳。尾先も星形だ。
 大きな金色の目で足元から見上げてくるこのポケモン――コリンクは、前足をおれの膝に乗せて甘えるような声で鳴いた。癖がついた頭の跳ね毛をわしゃわしゃと撫でてやると、コリンクは嬉しそうに鳴いたあと、おれの膝の上に飛び乗ってきた。

「コリンク、まだ営業時間中だ。遊ぶのはまた後でな」

 とは言うものの、可愛さに負けて顎の下を掻きながら言っているあたり我ながら説得力に欠ける。コリンクは気持ちよさそうに目を細めると、口を大きく開いてあくびを一つ零した。そのまま膝の上で丸まるものだから、どうしたものかと苦笑する。

「あら? コリンク、寝てしまったのですか?」
「ルテア。そーなんだよ」
「ふふふ。お昼を食べたあとでお腹いっぱいでしょうし、陽ざしがあたたかいこともあって眠くなったのですね」

 ルテアの手がコリンクを優しく撫でる。うつらうつらとしていたコリンクは、喉を鳴らしながら夢の世界へと旅立っていった。
 ギンガ団の調査隊の調べによると、コリンクは愛らしい見た目と反して気性が荒く、手懐けるには忍耐を要するという。しかし、最近おれたちの仲間になったこのコリンクは人懐っこい。個体差、あるいは性格だろうか。
 カイリキーのように荷車を引けるわけでも、ルテアのリオルのように障壁を張れるわけでもないが、ルテアのイーブイと並んで店番をしているとその愛らしさに惹かれた客が寄ってくることが多々ある。今やイチョウ商会の立派な看板ポケモンなのだ。
 あくびが出そうになるのを噛み殺す。膝の上の体温が眠気を誘発させてくるようだった。

「ギンナンさんも、一緒に仮眠を取られてはいかがでしょうか? お客様が来たら知らせますので」
「ん……助かる」

 これではウォロにサボりがどうこう言えないな、と思いながらも眠気に負けて瞼を落とす。ルテアが「おやすみなさい」と言ってくれたときにはもう、おれの意識はコリンクと一緒に陽だまりの中に溶けていた。



攻略本ネタ2 2022.04.15

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