3min Story | ナノ

3min story 3分間の魔法

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鯉登/告白

甘いものは、程々に

「おい、なまえ」ぶっきらぼうなその声に顔を上げれば、腕を組んだまま険しい顔をした先輩がいる。印象的な凛々しい眉の間に、深い皺を寄せていた。せっかくのイケメンが台無しではないかと思いつつ…

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月島/別れ

さよならばいばい

数年前、道端の占い師に、手相占いをしてもらったことがある。会社の飲み会の帰り道だった。薄暗い路地裏で小さな机とランプの灯りを灯して、相手を待つようにじっと座っていた占い師の姿は気味が悪く…

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尾形/不穏

私の世界の壊し方

"お前は、俺の言う通りにしていればいい" 父の口癖であり私が嫌いな台詞。それが聞こえた気がした私は、持っていたシャーペンを机の上にそっと置いてため息を零した。目の前に置かれた進路希望用紙…

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尾形/不機嫌

不機嫌ドライブ

仕事を終え帰宅し、ソファにダイブしてゆっくりしようと思っていたのに。リビングへの扉を開けたその先に立つ人物が、行く手を阻んでいた。車のキー片手に目の前に立ち塞がった尾形は、無言のまま…

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家永/捕食

美しき花

結果はどの項目も"正常値"。何度検査しても特に異常もなく、やる意味なんてあるのだろうかと疑っていた健康診断も、歳を取るにつれて増え始めた"要経過観察"と、ついに姿を表した"再検査"の文字を前にしてしまっては…

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尾形/切ない

プレミエール エトワール

「あれは?」「オリオン」「へぇ…じゃああっちは?」「おうしと…あー…ふたご座」一糸まとわぬ姿をした男女が、1枚の毛布に包まり身を寄せ合い、天井に広がる星々を見上げている。頭上に広がるそれらは…

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野間/迷子

Lost In The Supermarket

長年付き合っていると、彼氏とデート、なんていう台詞が頭の中に浮かぶ確率は、限りなくゼロに近い。同棲しているふたりの休日は生活必需品を買い足すためもしくは身体を休めるためのもので、好き好んでどこかへ…

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尾形/眠る

おやすみの魔法

休日最後の夜。私は“それ”に襲われる。日中は鳴りを潜めていた“それ”は、傾いた陽が伸ばした影の中から姿を現して、辺りがとっぷりと夜に沈み、町中の灯りがひとつ、またひとつと消えていく頃に…

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杉元/だらしない

なんとかしなくちゃ

――やっぱりなんとかしなくちゃいけない。はっきりと覚醒した意思を持って俺は、股座で俺の息子を今まさに咥えようとしているなまえちゃんの両頬を挟んでストップくを…

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杉元/片想い

一方通行片想い

「杉元くん」俺の耳に真っ直ぐに届いた声の主が誰かなんて確認しなくともわかった。ほぼ満席状態のカフェの中、入り口から見て右奥の窓際席。小さな窓に切り取られた日の光の中で…

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白石/お線香

そらもとべるはず

『一瞬だけでいいから、宙を飛んでみたいんです』私が語った子供みたいな夢を、白石さんだけは真剣に聞いてくれた…

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夏太郎/春

逢うは別れの始め

この街に滞在してはや一週間。刺青人皮の有りかを探るため聞き込み調査を繰り返し、大した成果もあげられず、割と手詰まりな状態だった。今日も今日とて、畳の上に腰を下ろした大人たちが…

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キラウシ/酔っ払い

半分こ

『ごめん、乗り過ごした』受話器から聞こえる声がいつもより陽気な理由は、酒を浴びるように飲んだからだろう。そのせいで電車を降り過ごしたのだと察しがつく…

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明日子/夏

可愛い君のためならば

「ほら、始まったぞ!」周りに気遣って小声で話す明日子ちゃんは、懐中電灯を振り回さんばかりの勢いで興奮していた。公園の一角に生い茂っている木の元にいるのは子供一人と大人が一人、そして…

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ヴァシリ/市松人形

手放したくない

日本のホラー映画が観たいと言う物好きなヴァシリのためにレンタルショップで代表的な作品をいくつか見繕い、適当な飲み物とお菓子も調達して、彼の部屋へとお邪魔することになった…

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宇佐美/青春

Shy!Shy!Shy!

「宇佐美くんもうっかりしてるとこあるんだねぇ」学校へ向かう道の途中にある小さな公園。使い古されたベンチに腰掛けている同級生は楽しくてたまらないようで、不快な笑みを隠すこともせず…

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鯉登/家出

家出青年とふたりぐらし

「なあ!これ食べられるか!?」散歩から帰宅した鯉登くんは、宝物を見つけた子供みたいに目を輝かせていた。彼の手には私が貸した麦わら帽子、そしてその中には…

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岡田/親心

やさしい男

「ううッ、ううぅう…!」さっきからずっと我が家のリビングには、岡田の苦悶の唸り声が響き渡っている。窓際で身を屈めたまま手にした鋏を持ち上げては下ろして唸り、持ち上げては下ろして…

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鶴見/お茶目

そういう季節だから

天気が良いから歩いてくるよ、と散歩に出た鶴見さんが体中にお土産を携えてご帰宅されるなんて、まったく以て予想外だった。「すまないねえ」「いえいえ……お怪我はありませんか?」「うん、ないよ。大丈夫」…

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杉元/きっかけ

決断のきっかけは案外単純だったりする

スーパーからの帰り道、ふと足を止めた。いつもは厳かな雰囲気を醸し出している神社が今日はやけに騒がしい。興味本位で覗いてみると、なんと蚤の市が開催されていた。服や陶器や本…様々な物が並ぶ蚤の市は…

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尾形/美しい涙

雀色時

「君はきっと知らないだろうね」なんの前触れもなくおしゃまな口調でそう呟いたなまえに、どういう意味かと尋ねても、力のない笑みが返えってくるだけだった…

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明日子/朝ごはん

やさしい君の朝ごはん

師も走るほどの忙しさに翻弄されて、ありとあらゆる気力が削がれていく十二月中旬。時間は足りず大幅残業、睡眠不足は当たり前。気力体力削られて、ついには食欲まで潰えてしまった…

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尾形/片想い

I Love Youが聞けるまで

「片想いって本当に大変だね、百之助」古びた喫茶店の、窓際のボックス席。ほつれて剥がれて今にも壊れそうな革張りのソファに座って煙草をふかす俺の向かい側には、アイスコーヒーのストローを混ぜながら、その意味を噛みしめるように「ほんっとうに、大変だよ」と呟くなまえがいる…

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野間/後輩

多忙に無謀

「長期休暇貰えるとしたら、どこ行きたい?」 一定のリズムを刻んでいたタイピング音が緩やかに止まり、錆びついた椅子の軋む音がする。隣の席にいる野間くんは、どう返答しようかと思案し始めたようだった…

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尾形/春

スプリング・レディ

衣装ケースを開くと、ワンシーズン前に使っていた柔軟剤の、懐かしい香りが広がった。 視界に飛び込んできたのは、はっとするほど鮮やかなピンク色のトップス。その横には控えめながら華やかさを主張している檸檬色の薄手ニットと瑞々しい色した緑のバッグ、そしてその隣には真っ白なレーススカート。よく使う衣類が収まっているケースを開いて見比べてみると、…

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野間/深夜のお菓子

ミッドナイトスイートダンス

「直明、もう一回言ってごらんよ」 キッチンに立つなまえは肩を振るわせながら必死に笑うのを我慢している。一体何がおかしいのかわからず、仕方なしにもう一度同じ単語を口にして…

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野間/深夜のお菓子

ミッドナイトブレイクタイム

甘い匂いにつられて台所へ向かうと、今にも崩れそうなクッキーの山が出来上がっていた。数時間前までの機嫌の悪さはどこへやら。憑き物が落ちてすっきりとした様子のなまえは、皿いっぱいのそれらを眺めて「焼き過ぎちゃったんだよね」と困ったように肩を落として…

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