3min Story | ナノ

3min story 3分間の魔法


優柔不断で流されやすい杉元佐一が元カノとずるずるしちゃう話
ちょっとだけ背後注意。
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――やっぱりなんとかしなくちゃいけない。はっきりと覚醒した意思を持って俺は、股座で俺の息子を今まさに咥えようとしているなまえちゃんの両頬を挟んでストップをかける。
ベッドの真横にある窓の外には、灰色がかった空が映っている。微妙な天気ではあるがまだ太陽は天高く登っているはずだ。階下から聞こえる子供の声がやたらと耳について、こんな時間からこんな事をしている俺たちは大人としてどうなのだろうかと、罪悪感だけがじりじりと積もっていく。


「ダメだよ」
「えーなんで?そういう雰囲気だったじゃん。気分じゃなくなった?」


俺の両膝の間で不服そうに眉を寄せている彼女は、どんな状況でもやっぱり可愛い。可愛いけれど、今は流されるわけにはいかない。


「そうじゃないけど……ダメなものはダメなのッ」
「ふぅん?もう勃っちゃってるけどねぇ」


なまえちゃんがゆるく握った右手には俺の一物が収まっている。目の前に下着姿の女性がいて、その彼女が誘惑してくるのだから大人しくしていろと言う方が無茶な話だ。ていうかさっきから足に胸あててるよね?柔らかいしなんかいい匂いがする・・・なんて悶々としている俺をよそに、再び股座へと顔を埋めようとしているなまえちゃんを無理やり引き剥がす。ベッドの上に転がった彼女は「説得力無さすぎ」と愉快そうに笑っている。クソ、落ち着けよ息子!!ごほんと咳払いをひとつして気を取り直してから、俺は言う。


「ねぇ、俺たち別れたんだよね?」


数ヶ月前の事だった。長い事付き合ってお互いに結婚適齢期を迎えたものの、恋人から夫婦へとステップアップする踏ん切りがつかず。結婚しなくても別にいいと彼女は言っていたけれど、お嫁さんに迎えてあげられない情けなさとこのままでは彼女に申し訳ないからと、俺の方から別れを切り出した。手前勝手な理由で関係を解消させたのだから、もう二度と会ってはいけないと連絡先も何もかも処分したにも関わらず、付き合っていた当時と同じように彼女は俺の家に泊まりにくるし、距離感も変わらないし、こうやってちゃっかり大人の愉しみにまで興じてしまっている。


「だって私と佐一、体の相性すっごく良いんだもん」


彼女はにいっと口角を上げ俺の腰あたりに跨ると、Tシャツで隠れているはずの俺の乳首を抓り上げた。痛みよりも痺れに近い感覚に、情けない声が出る。俺の体はなまえちゃん好みに調教されているし、もちろん逆も然りだ。


「っ、ダメだよこんなのずっと続けるなんて、あっ」


なまえちゃんはこちらの静止を一切聞かず、俺の服を捲って唇を落としている。薄い皮膚を吸い上げられるたびに小さな刺激が広がって、こちらの意図と関係なしに体が跳ねる。


「いい加減に俺たちっ、なんとかしなくちゃ――」
「んもう、佐一くんは最近ずっとそればっかり」


いい加減にしてほしいとばかりに深いため息をついたなまえちゃんは、俺を鋭く睨みつける。


「何をなんとかするの?」
「何って…まぁ色々だよ」
「佐一くんが決められるのかなぁ」
「なんだよその言い方……」
「自分の頭で考えてみたらいいよ」


試すような物言いに歯向かう隙もなく。なまえちゃんは俺を再び組み敷くと、両膝の間に体を割り込ませて首をもたげた一物に手を伸ばす。





仕舞い忘れた風鈴が暖房の風に揺られて、夏を惜しむかのように鳴いている。
あれは確かふたりで一緒に行った旅行先で買ったやつだ。軒先にぶら下がるいくつもの風鈴を前にどれを買うのかいつまで経っても決められない俺の代わりに彼女が選んでくれた品のはず。断言できないのはそれがあまりにも前の出来事のせいで、記憶が曖昧になっているからだ。
こうやって何もかも忘れていくのだろうかと、俺は漠然とした不安に駆られた。初めて出会った時も、付き合い始めた時も、幸せだった日々も、しょうもない日常も、別れた日のことも、それからのことも。いろんな記憶が思い出せなくなっていく。時に流されるがまま過ごすのは楽だし、なまえちゃんのことは今でも好きだし、気持ちいいことはもっと好きだ。でも、でもなぁ……。
最後に『このままでいいのか?』という問いが頭に浮かんで、俺は首を振った。いや、だめでしょ。


「ごめんちょっとタンマ」


そうしてまた、話は振り出しへと戻る。

なんとかしなくちゃ

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