-2013


18/11/10(Sat) 21:55  
全身麻酔をかけられている最中は、どうやら夢を見るらしい。
(目が覚めたらそれがどんな夢だったかなんて、一摘みも覚えていなかったのだけれど、目が覚めた時に「ああ、夢を見ていたな」と確かにそう感じた)

眠剤に日々の睡眠を頼り切っている私は、深く眠れないまま微睡む。外から聞こえる音を聞く限り、終電はまだ出ていない。

違和感。圧迫感。酸素マスク。
身体は動かせない。
薄暗い病室。警告音。響くナースコール。
ドレーン。カテーテル。
消毒の匂い。どうしようもない渇き。
ぼんやりとした意識の中で、何を考え続けることもなく、屍のようにただただ横たわる。

(電車の音が途絶えた。)

夜は、長い。
誰かが鳴らしたナースコールと、看護師たちの足音、それと、外を走る車の音だけが、私の頭に響いていた。
 




18/8/5(Sun) 02:58  
漠然とした不安、穏やかに続く生活は絶望、私は誰だろう、自分が自分でないような、そんな感覚、療養も兼ねて暫く仕事を休んでいる。
働かないと、どうしようもなく寂しくて、これ以上頭がおかしくなっては困るので、毎日、掃除、洗濯、炊事、気が向いたら昼寝、読書。
「おかえり」がある生活は、安心感はあれど、どうせ私の人生だ、どこかでぷつりと終わってしまうに違いないと、猜疑心を持たざるを得ない。
カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しくて、眠れないまま蹲る事が増えた。
蝉の声、八月、観覧車に乗りたい。
夢と現実の区別がつかない事が増えてきた、明晰夢ばかり見てしまうからしょうがないとはいえ、毎日確認するのも疲れた。
手術はもう少し先になりそう。
何だか酷く疲れた気がするのは暑さのせいなのか。
水族館の魚たちみたいにぐるぐる回り続けて、日々を消費して、私はいつかの夏に死にたい。
 




18/1/16(Tue) 06:03  
年が明けた。変わったことは一つもない。
昨日と変わらない今日の連続。今日と変わらない明日の連続。

冬の空気は当たり前に冷たく、非日常が日常だった頃を思い出したりして、煢然たる気持ちになったりなんかする、けれど、それも毎年の事だ。
行き交う人々の吐く白い息が、酔っ払いたちの楽しげな笑声が、雑踏に踏み込めない自分をどうしようもなく責め立てる。
駅からの帰路、靴紐を結ぼうと屈んだ時、悴んだ自分の手に漸く冬を感じて、何と無く、手を擦り合わせた。

煙草に火を点ける。
「例えば、水溜まりに反射した雨粒が、染み込んで消えるように。」
煙草の煙が、目に染みる。
「例えば、あの大きな観覧車の行方を、早送りで見ようとしたように。」
発砲音。
「言葉の中に、本当があるか分からないのに嘘は必ずあるから、大切に想って欲しい。」
発砲音。

今年こそは、おやすみだなんて言洩らして、未来やその他、嫌いな物から逃げ出すように、優しい死に方をしたい。
明日の明日、そのまた明日。
明日までに変われない癖して、いつになったら変われるというのだろう。
 


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