爪先で踏み潰してしまいそうな数時間を見つめていた 空は直ぐに暗くなってしまい背負った誰かの感情の重さに思わず溜め息が零れた。街を歩けばマイナス方向へと向かっていくし部屋に籠もっていたって悲しくなってすぐに無くしてしまっては手探りで明日を探すのみで どこへいればいいのかもわからない、どこへもいけないのに。散々逃げ回った自分のせいだ、どこかへ所属していたいだなんて烏滸がましいにも程があるだろう。雪へ、灰を落とすのは好きではない。先へ、歩いて行く背中はいつか点になってしまった 。
 





白い光の夢は隅の方に蹲っている様な、ただ呼吸をしているだけの白緑の子を蔑ろにするとふつりと切れた。糸を手繰り寄せてみれば安心がそこにはあって、それでも手にする前に全て溶けてしまった。言葉にはしない。安心したいならここへはいない方が良い。きっと互いにわかり切っていることだろう 不安定が安定な二人だろう、背中合わせのままに睨めっこしている。見えない相手に気を張っている。それでいいのだろう、今だけは。名前もつけられないうちに落ちて行く。手を繋いで眠るのは一時の寂しさ紛らわしか。
 





呆然と立ち尽くしている背中に頬をつけられたような やはり慰めは苦手だ、同情するのもされるのも苦手で それでも、もう何年も一緒にいるのは許せているからなのだろう。分かり合えるだなんて願ってもいないから互いにほんの少しの思いやりをもう少しだけ持てたのならその手の中の砂時計を握り締めずに済むのに。煙草の煙を燻らせる、吐く、分かることは一つだけしか持っていない 昔も今も変わらず。毛布に潜ろう。暗がりの中 月明かりに焦がれていた事を思い出す。午前四時の水溜りと発砲音、鳴り続ける携帯電話と、壊れた戦闘機。言葉は空気を震わさなかった。
 


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