タンカレーのジンを久々に買ってきたのでライムを絞って飲んでいた。アルコールでふやけた頭に沁みるのは、心地よい掌で踊らされる、一つ、二つの言葉。たったこれだけのアルコールでもう頭が浮かれている 今夜は四分の一程を飲み、冷凍庫へ仕舞った。ああしかし優しい人と話すと自分に嫌気が差すな 余り自惚れるなよ 凡才だろう 過大評価をすれば後々痛い目を見る。身の程を思いしれ、それでも決して卑下していたくはない。自分の感覚で美しいものを信じていればそれでいいだろう。何が美しいだ、何もない。なぞる記憶はもう擦り減って擦り減らして霞んでいるというのにこれから先に何を見られるというのだろうか。いつまでたっても、空の頭を持て余してばかりで 変われないな。
 





草むらに佇んでいる猫に話しかけてみたって返事はしてくれない、人を待つのは苦手だな。有形のそれは歪だ、無形のそれは信じられるだろうか、泥に塗れて掘り返してみれば瓦落多で悲しみは見て見ぬ振りをして一緒にまた沈めておいた 誰もが持っている悲しい事はテレパシーなんて使えない私には分からないな、笑って話す友人、彼の言葉の一つ一つは笑えない話だった、人一人居なくなる事の重さは身を以て感じなければ分かり得ないだろう。あのときこうしていれば、だとか、夢に出てくる姿を追っては苛まれる。立ち止まった人々はそんな事、望んでいないだろうに。しょうがない事だ。取り繕っては投げ捨てる、温もりを感じては恥ずかしくなって、ああ、消えたくなる。苛まれる事も恥ずかしい事も何もないのにな 自己否定は楽だから毛布の中に逃げ込んでは自身を気の済むまで否定して、腐って溶けて落ちて行くだけ。腐敗していく様な安い日々は持っていないと信じているけれど 信じたいだけか。賛美歌は彼の歌だった、もうすぐ二年が経つ。
 





悲しい現実と毛布の間 斜陽の差し込む部屋で泣いている人の背中。レンズが網膜に張り付くようで不快だ。今日は一度も外へ出ていない、退屈を持て余している。硝子細工の掌はどんなに脆いだろうね。柩は鎖で繋いで置かないと直ぐにどこかへいってしまう。約束をしよう。名前をなぞれば裏切りも受け入れられる。背中合わせでも構わない。"透明標本" 薬品につけられているのは青く染められたネズミの死骸 生きていた時間は止められてしまっている。最悪な状況をいつだって想定している癖に対面すれば途方にくれてしまう どうすればいいのだろうか。
 


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