手繰り寄せる言葉の数々、雨粒を傘に乗せては ぽつぽつと増えていくそれをじっと見て 蝋燭と猫背、映る影は頼りなく。夜中にふらりと歩いてみれば淋しく彷徨うばかりで ひとつの雨粒も幾千の雨粒も同じく私を憂鬱にさせる。雨に濡れ透けている散った桜の花びらと正体を表せない様な悲しみは混じり気が無く 浮いたままにどこへ消えて行ったのだろう。見当たらないから 最初からなかったのだろう。
 





白い兎の佇む公園で彼は泣いていた。缶ビールを片手に静かに泣き続ける彼を、私はただみるばかりで何もできなかった。手を触れてはいけない気がした。まだ少し肌寒い夜の風が追い詰めるのだろう 泣かないで、だなんて軽率なこと言えやしない。どうすればいいのかわからなくなった 止まってしまった様だった こんなにもどうして苦しんでいるのだろう。見る限り、マイノリティな人々はやはり、どこにも居場所がなくなるばかりだ そのくせ彼らによる反乱なんて起きやしない。変わらないのだろうな 息をするという事はあまりに責任が重すぎる。それは勿論彼らにとってもそうだし、同じく息をしているマジョリティ、大多数の人々は挙って共犯で 少数派の人々を無意識のうちに苦しめているんだろう。終わらない。気が重いな。これからのせかいはこんなにも、救いが無い侭なのだろうか。四月の霧たちこめた朝、背嚢を背にして発とう。
 





もうどうにも逃れられないのだろうか。雨はやまず置いてけぼりの水溜りは溢れるばかりで 何一つ変わらないのにだなんて言ってもね その奥で安心しているのだろう。変わらない事はそんなにも美しいのだろうか 滑稽だろう 不幸が幸福なんだろう、どうせ 本当は笑えているに違いない。揺蕩い気まぐれに息を吐いては誰かに手を伸ばすだなんてお人好しのふりをした、ただのエゴイストだろう、吐き気がする。テキーラ、ペルノ、アブサンを飲み込む 気持ちのいい、ふわりと浮かぶ様な酔い方をした。家へ帰ればベッドにうずくまり涙目が嘆いていた どうしてそんなに悲観する? 振り切ってしまえばいいのにね 勿体無いな。目を逸らしてきたのは自分の方だというのに 誰でもない形もなく漠然としたものの所為にするだなんて都合よすぎるね そうやってこれからも生きて行くのなら何も言わないけれど。朝方目を覚ますと、不眠症の彼は私の顔を見つめ、泣きそうな顔で呟いた。大嫌いだ 死にたいだなんて 巫山戯るなよ。私にだってわからないことばかりだ どうしていけばいいのだろう。
 


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