慰めたって何も変わらないと窓を開けて、惰性で生きる。息を吸い込めば空気は生温く、そのくせ洗濯物は乾ききっておらず、うんざりしたまま珈琲を一杯とバターサブレを。部屋に置き去りにされたビデオカメラや機材、下着と、洋服たち。匂いを一摘み抱きしめて、次の休みを待っている。一週間が過ぎていくのを最近は早く感じる。
ただこなしていくだけの、こなしていっているだけの私の日々を素晴らしいと言う彼の目を見る事が出来なかった。胸に顔を埋めて、「香水つけてないのに、いつも甘い匂いがする」といい、そのまま黙り込んでしまった、どうしてそうやって。辛い悲しい苦しいそんなの名前がついてるくらいなんだから当たり前の感情だよどうして理由にして誰かに甘えようとする?誰かに甘える為に名前を付けたのだろうか。誰かがそれを理由にして私に甘えてきたって受け止められる気がしない、拒んでしまえば薄情だと言われるのだろうか。甘えられている?わからない。何も返してあげられない、何も出来ない、ついきつい口調であたってしまっても相変わらず穏やかに言葉を返してくれる人に情けなく悔しく、不甲斐なさを感じるだけだよ。一日中ごめんなさいをいっても足りないんだったっけ、言い合いたくはない、傷は舐め合いたくない。気が向いたらにしよう、待ってなんかいなくていいよ、私は待たないから。
 





どうでもいいことが瞬間過ぎ去っていく。ずっとそう、これからもこの先もずっとそう。誰かと話すのは非常に疲れる、もう要らないとさえ感じる様になってしまった。言葉も要らずに一緒にいられる人とだけ静かに潜んでいたい。静かに、撫ぜるように日々を丁寧に過ごせたらどんなに素敵だろうか。自分のペースを見つけられたらいいね、と言われてもそんなのはもう見つかっているんだよ。見つかっていたってそんなペースじゃ置いてけぼりにしかならず、結果先の見えぬ日々の繰り返す労働に疲れてしまうだけなのだろう。呼吸をすればしただけでもう共犯で、言葉にすればもう個人のものではなくなってしまう。こんな取り留めの無い雑記だって私がここに記録する以上、私だけのものでなく見ているあなたやきみや誰かと共有している文章でしかなくなってしまう。たった一人で言葉を抱きしめられたのなら、と思う事もあるけれど、共有する、こういった形でくだらない日々を消化する事で一定のラインを下回らないギリギリの生活を保っているのだろうな。日々は綱渡りだなんて使い古された言い回しだけれど、それでも本当にそう感じる、少しでもバランスを崩せばもうきっと落ちるだけで戻ってはこられないだろう。どうして今ここにいるのだろう。何も知らないのに、よく笑っていられるよな。甘いんだよ。甘えているんだよ。早く急いで裏で眠ろう。ノートに文字を散らす。神経質な字だねと言われた事を思い出して、ほんの少しだけ意識しながら文字を書いてみた。ほんの少しの意識じゃあ特に変わる事もなく、普段よりも若干筆圧が濃いだけの、私の字だった。しょうもない字だった。
 





ふと襲われる虚無感は淋しいからでしょう、淋しいのは好きだからでしょう、どうせまた会える、と言われたら何だかむず痒くて眠れないのは誰のせい、どうやって息を止めたらいいだろう。
夢を見られないならどうすればいい。
私がたまに吸うメンソールの煙草はハイライトで、ハイライトを嫌う君は顔をしかめた。
八月。
アコースティックギターの音はあまりにも優しい。
もう八月。
早く帰って何でもない歌をなんでもない風に歌って、二人ベッドに転がっていたい。
 


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