「・・・ここの建物には・・・出るんだよ!!」
当某所のカジノが行われている・・・ビルの中。

スタッフルームでは他の従業員が休憩がてら
会話を楽しくしていたはずがまさかの出る、という
恐ろしい話に変わっていた。
ここの建物で昔 自殺者の怨念が残っていて
夜遅くに立ち入ったものには怨念が押し寄せ襲いかかる
という夏に相応しい<怖い話>をしていたのだった。
ほかの従業員は「ほー、村上怖いこというな!」
と苦笑いをこぼしながらも他の女性のバイトも「やめてくださいよー」
なんていって女子特有の高い声が漏れた。
なんとなく想像つく展開に男メンバー達は笑ってしまう。

「みつきだってびびって・・・あれ?」
「?・・・何がですか?」
「あー・・・いや」
他の女子たちはすごい怖がっているのにバイトで最年少でもある
みつきはそんなそぶり、表情も普通の顔をしていて
怖がるなぁ、なんて思っていたほかの者達は少しだけ寂しいようだった。
村上は笑っていて「すごいなお前は」と笑っているだけで
あり怖い話はここで終了と思っていたが、夏といえば!であるからか
自分たちが体験した怖い話をすることになったのである。




「・・私の怖い話・・・ですか?」
「そうだよ!みつきはなかった?」
「・・・あ、一度だけ怖い体験を。」
従業員同士怖い話ながら、若干嘘っぽいエピソードを
交えつつ雑談をしていった。
何も怖い顔をしなかったみつきに振ってみれば
意外にも乗ってきて皆ソファーに座っていたみつきに
注目の目線が置かれ始めた時、タイミングよく
電話の音が鳴り始めた。

「!はい・・・あ、今日だったんですね。・・・はい!」
電話を取ったのは村上であり、村上が電話を切り
目の前にいる他の従業員たちに声をかけた。
「悪い、今日の業務はここまでらしい。お客様にも
お帰りいただいてお前たちも終ったら帰ってくれ!」
急に焦った声を出しながらも村上はそう伝えると
扉から出ていって辺りがしん、となった。
「・・・?どうしたのかしら村上主任。」
「おい、あれじゃないのか・・・実は自殺者の命日とか・・・」
「だから先に閉めちゃうってこと?いやだー!早く仕事
終えて帰っちゃお!」
つい最初の村上の話を思い出したのか男性従業員が言い出すと
隣に居た女性がまた過剰に反応し、連鎖がはじまり
皆バタバタとしはじめ、ホールへと足を運ばせた。






みつきは眉間に皺を寄せながらもビルの中へ入っていった。
・・・やってしまった。


「(携帯忘れるなんて・・・)」
他のスタッフはさっさと仕事を終らせて帰って行ってしまった。
無論、みつきもその中の一人だったのだがいつものスタッフルーム
に携帯を置き忘れてしまったのを、電車に乗る際に気が付いたのだ。
ああ、やってしまった。
ビルの前に付いた時、いつもなら全然怖くもない場所が
村上がいっていた自殺者の怨念という言葉がみつきを支配している。
ビル内に入るまで・・・
夏独特の生暖かい風が余計に不安を掻き立てられ、みつきの
肌がじんわりと汗が出てきて、伝っていくのがわかる。
・・・少しだけ、喉も渇いたのか小さくため息を零した。
ビルの中は、外よりも少し湿度が高く、暑い。





薄暗く、非常口を知らせるための誘導灯しか明かりが付いて
いなかった。正直、それもあってもほぼ真っ暗な状態で
みつきの緊張がピークに達しそうになる。
「(だだ、大丈夫・・・村上さんがいったことなんて
ない・・・!大丈夫・・・)」
幽霊なんているはずない・・・ないんだ。と自分に自己暗示を
かけるように歩いていくと見えた・・・スタッフルーム。
しかし、ノブに手をかけまわしてみるとガチリッと鈍い
音がみつきは気が付いてもっと眉間に皺が寄る。
その音を確かめるように・・・あともしやと嫌な予感が頭上に
通り過ぎ何度もドアノブを回すが、ガチガチガチと鈍い音が
続き尚且つ開かない・・・。
「嘘・・・カギ、しまってる?」
たどり着いたのにこうなるのか、とみつきは思うと
うーんを考えながら下を向き、考えた先は
「(店長室・・・かな。)」
一条がいるはずのモニターが沢山ある部屋。
みつきはまた移動しなければいけないのか、と思い
ノブから手を離した時、ガチャリ・・・・
先ほどから聞いている音よりも少し軽めの音が鳴った・・・
「(え・・・どうして?)」
何回ノブを回しても開かなかった場所がノブから
手を離した瞬間開くという不思議さをみつきの中から
拭えなかった。

夢じゃないのか、と思うようにもう一度手をノブに置き
くるり・・・とノブを回す・・・先ほどの音は鳴らず
カギなどしていなかったかのように開いてしまったのだ。
「!」
開けた時、光が漏れる・・・誰か人がいるんではないかと
入ろうとした時に内側からがしりと手が出てきて
みつきが驚くその瞬間、その前に中から出てきた人をみて
へたりと座りこんでしまったのだ。









スタッフルームの中にみつきは入った。
・・・というか、入ったと言うよりも入れて貰ったのだ。
腰が抜けてしまい歩けなかったので俗にいうお姫様
だっこをしてもらってしまったらしくみつきは
顔を上げられずに居た。

「そこまで驚くことだったか?伊藤さん?」
「・・・あ、いえ。黒崎さん。」
顔を上げた時、見えたのは笑っている黒崎義裕であり
一度だけみつきはあった事があって、彼は自分の名前を
わかっているようだった。
まさかスタッフルームに黒崎がいるなんて予想もしなかったが
一度顔を交えている相手ならほっと一安心してしまう。

「それにしても、こんな夜遅くに危ないだろ。
・・・もう少ししたら一条が帰ってくるから送って貰うといい。」
「いえいえ、そんな。」
「腰が抜けた女性を野放しにする輩じゃないからな。」
「あ・・・はぁ。」
と笑いながらいう黒崎に少しだけ安堵の表情をみせた。


「遅くなりました黒崎様・・・!みつき、どうしてここに・・・」
「あの、忘れ物を取りに。」
扉を開けた時、幹部でもある黒崎だけかと思っていた
一条が驚いたのはバイトの伊藤 みつきまでも
いるということだった。
みつきはテーブルに置かれていたものをみせ
一条も納得をしたようだ。
「・・・そうか。黒崎様、こちらのほうは点検が終りました。
チェックの書類です。」
「悪いな。」
みつきに目をつけていたが目線は黒崎になり一条が
もっていた書類を黒崎に手渡した。
その書類をとりあえずパラパラを軽く目を通した。

「ご苦労、あとこの子をちゃんと送ってやってくれ。
大事なバイトなんだろ?」
「はい。」
とりあえず黒崎がこの部屋から先に出るらしく
二人は頭を下げ、扉が閉じたら頭をあげ
一条はみつきをみた。小さくため息が漏れる。


「今日は黒崎様やオレがいたが、あまりここを散策するな」
「すいませんでした。」
「・・・いや。腰が抜けたらしいが・・大丈夫か?」
「あ・・・はい。」
苦笑いを零しながらもみつきはそう言う。
今日の緊急点検の際に一条は主任でもある村上とあったのを思い出す。

村上と会った時、皆でホラーの話をしたがみつきが
まるで興味を示さないのか、それとも幽霊やオカルトを
信じていないからかあまり怖がっていないと聞いたのだが
「(ホントは怖がりなのか。)」
「一条さん?」
「ほら、帰るぞ。仕方ないから送ってやる。」
「あ、はい。」
「・・・そういえば、夜ここに来るなというのは
大分前に集団自殺があってな、点検はちゃんと定期的に
供養をしていているんだが・・・」
「・・・・」
「みつき?」
一条が冗談で即興で作った話をした時、後ろに居た
みつきの反応がなくなった事に不思議がり一条が
振り向くと無表情のまま、固まったままのみつきがいたのだった。






欲望アバンチュール!(夏の番外編)






「・・・早く部屋からでないと送らんぞ。」
「!出ます!出ますよ!!」








2011.08.07

久々に夏のホラー特集くまれていて
絶対書きたかったネタ。
黒崎さんの性格がうまくでてなくてすいません。
主人公は多分ツンなんで弱点を見られたくない派だと思います。


prev next
bookmark back


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -