バイトの初日の当日、
朝から高級車がとまっていて近所で噂話になるであろう・・・。
窓からは黒い高級車が見えていて、その相手も重々承知である。
部屋から降り、玄関口に足を付けた瞬間、図ったように
男:村上は現れた。
母からも驚きの声をあげていて、みつきの額に小さな皺が寄る。
「(お母さんに話かけてなかった・・・)」
しかし、バイトの主任さんっていえば母は頭を下げていてなんだか妙に
母に対して申し訳なく感じるみつきであった。


「それじゃ行こう。」
「…はあ。」
なんだか爽やかに言われて何か言おうと思っていた
みつきは言葉を失ったのだ。
助手席に、と言われ助手席に乗るとすぐにその場から
去っていくように車は走り出した。
暑さがまだまだ続く、七月の後半のとある日の午前。






ビル内に入ると渡されたのは制服で、制服は
基本的にスーツらしい。勿論未成年の場合は支給してくれるそうで
事前に整えて貰っていたらしく新品であったしネームプレートが
胸ポケットにささっていた【伊藤】の文字が輝いて見えた。
更衣室で支給された制服に着替えると
スタッフルームでは何人かの人たちが先に休んでいて
主任でもある村上の後ろにいたみつきを見て従業員達がざわついていて
腰を落していた従業員たちが立ち上がった。

自分たちよりも明らかに年が若いのをみて少し驚いた顔をしていた。
それと少しだけ興味のある瞳がみつきに突き刺さる。
「バイトで入る事になった伊藤 みつきだ。」
「伊藤 みつきです。よろしくお願いします。」
そんな典型的自己紹介からはじまり、とりあえずと村上がみつきに渡したのは
分厚いテキストであり、みつきの目が点となっていた。
「バイトの経験は?高校生だからあまりないか?」
「・・・そうですね。春に短期を一回だけ。」
「そうか。とりあえずここのマニュアルだ。言葉遣い・挨拶まで一通り。」
村上が少しウキウキしているように見えるのはここの従業員たちにも
わかるらしい。足が治るまでの間はマニュアル研修らしいが
全部聞くだけというのは正直絶え難いらしく、ホール案内もあると聞いて
みつきはほっと一息はいた。












2時間たっぷり、村上主任とのお勉強会が終った後にやってきたのは
ここの支配人でもある一条だ。一同店長でもある一条をみて一礼していて
みつきもつられるように頭を下げた。


「あ、一条店長・・・先にいらしてましたか。」
「あぁ、どうだ伊藤。頭にはいったか?」
「一応・・・あ、はい。」
「だったら次はホールだ。」
「(ファミレスと同じ感覚なのかな。)」
とおもいながらも初めてホールへ入った瞬間、まるで別世界のようにみつきは見えた。
すごい・・・、何がすごいというのは人がたくさんいて、尚且つ
よく映画で見る【カジノ】とほぼそっくりだったからだ。
ポーカー・バカラ・ルーレット・ビックシックスまである。
名前と若干のルールしか知らないみつきだが驚きを隠せない。

そうこうしていると村上・一条と共に階段を上がっていく。
その上に、パチンコ台があって尚更内心で驚きを隠せなかった。
「(カジノなのに、パチンコ?)」
「パチンコは1玉40円からある。」
「…マジですか。」
普通に出回っているパチンコの10倍・・・みつきの顔が少しこわばる。
当たりが出なければ、かなり痛い損失になるだろうと考えていた。
未だに高校生でもあるみつきには、少しだけ気が重たくなる・・・。
本音がぽつりと呟いたのを聞こえたのか、一条の顔に少し
だけ眉間の皺が寄る。
「…ホール内では言葉遣いも気をつけろ。」
「…はい。」
「それと、まあ・・・カジノの目玉の台がある。」
「目玉の台…ですか?」
「見に行って来い。」
背中をトン、と押されて
人が楽しんでいるのをみつつ、みつきは奥へ奥へと足を踏み入れた。
10倍・100倍のパチンコ台の奥・・・

目玉の台、そこだけ柵がありその柵の中にあった。
パチンコ台としてはでかく、なおかつ踏み台の
端には数字が書いてあり、その踏み台にはパチンコ玉がしきつめられていて
その台だけは、ぽつんと一台のみしかなかった。

「…これって…」
「ここのカジノの目玉【沼】だ。」
「…沼、ですか?」
「これは一玉4000円もする台。パッキーも何百万からとある。」

一条が手に持っているのはそのパチンコ台を動かすために必要な
パチンコ玉を出すパッキーカードでありみつきの手に渡った。
「伊藤、お前もやってみるか。」
「・・・まだ破産はしたくないです。」
にやりと笑った一条店長にみつきは少しだけ身震いを感じたらしく
このパチンコをやる人物達はどんなギャンブラーなのだろうとみつきは
今はただ軽く思っていた。





当時のみつきは、あの化け物のパチンコ台と戦うのが兄だということは
まだまだ、知らなかったのである。







欲望アバンチュール


(とりあえず景品を渡すのとエスコートを伊藤に任せるから
村上、一日でマスターさせろ。)
(はい!)
(・・・一日でマスターできるとは思えない)
そのあと、本当にスパルタをみつきは体験したのであった。





2011.09.07

リハビリ小説でなぜかアバンチュール。
説明があまりうまくないのはいつもながらも酷いですが
こんな感じではじめましたよ〜っていうのを書きたかったので
個人的には満足です。


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