「みつき!今日映画見に行こうよ!」
みつきの好きなラブロマンス映画だよ!という友達の声に
私はウキウキしたのだけれど、その嬉しさは消えてただただ
今日の予定を潰してくれた人を頭の中でずっとどうしてやろうかと
考えていた。
今日は、兄さんに会う日であったのだった。


私には兄さんと姉さんがいる。
姉さんは公務員でちょっとお堅い?
んだけどいい人。ただし、兄だけは別である。
兄は高校と同時に上京したのにも関わらず、定職しない人だった。







兄の名前は伊藤 開司。上京したのはいいのだけれど
あんまりさえない兄だと思う。というのが私から云うに一言の印象だ。
だけれども、やっぱり血が繋がっているというのは不思議であり
本当に憎いという訳ではない。
だけれども、何も今日会うことはないのだと思う。
突然だったのだ。
メールで「今日空いてるか?」と言われて
「来週じゃダメ?」と返事を送ったら即メールの返事が帰ってきた。
『来週じゃダメなんだ』という・・・本当にダメ兄貴。
だけれども、ここまで兄が云うのだから何かあったのだろうと思い
とりあえず私は渋谷に足を運んだのだ。
「あれ?みつきもう帰るの?」
「うん。ちょっと野暮用。」
「え?何!?いつの間に彼氏なんて作ったの?」
「違うってば。兄からね。」と作り笑いをしながらも
私はさっさと授業から抜け出して行ったのである。





約束の場所は渋谷のハチ公前、ちなみに午後の2時。
電車の中で軽く化粧をして身だしなみをととのえたが
バッグの中から鏡と取り出してもう一度見直す。
髪の毛の乱れていない、化粧も完璧。
そんな時間でも流石都心だからか人で溢れ返っていて
同い年の子達もちらほらと歩いているのを発見できる。
ちょっと早かっただろうか、ととりあえずケータイを見たとき
前を向いたみつきの目に付いたのはあの長い髪の毛である。
また、髪の毛切ってない。と頭の中でケチをつけた。
「兄さん、おひさしぶ・・・」
「おぉ、悪いな。」
渋谷のいつもの待ち合わせの場所に既に兄はいた。
一応愛想笑いをしていたのだが私の顔は笑みで凍ってしまった。
「何その傷・・・何そのボロボロな身体。」
「・・・みつき?」
ワナワナ、という効果音が似合う。
頬の傷に手の指には傷跡・・・なにか事故でもしたのだろうかと
考えていたが一方の兄でもある開司は眉間に小さく皺を寄せていた。


「兄さん事故でもしたの!?全然聞いてないんだけど!」
「ちょっ、みつき落ち着け!」
ハチ公前でまるで恋人のようなケンカが聞こえる中(だってみつきが
制服で、兄とそんなに年齢も変わりがないから)
カイジの方としてはそんな真剣に怒る妹をみるのが久々だからか
戸惑いを隠せずに居た。
「とりあえず、飯食わないか・・・」
「・・・」
むすっとしたみつきはとりあえず、という兄の言葉に賛同した。
こんな人ごみの中大声をだしたみつきが少し恥ずかしそうに
下を向き、兄でもあるカイジは近くのファミレスに足を伸ばした。



・・・・カイジが、地下から地上に出て数日した日のことである。







「兄さん、ちなみに聞くけど仕事はどうしてたの。」
「・・・一応働いてたさ。遠くでだけど。」
「・・・へえ、派遣。なにそれリゾバとか・・・」
ファミレスに入って、とりあえずお互いに注文をした後のみつきは
それはもう恐ろしい。
質問タイムの始まりである。
確かに働いていた(@地下王国で)し、遠いだろう(@地下)
間違っていないし、嘘でもない。
兄が嘘を付いていないと判っていながらもあえて質問をするのだ。
「・・・で?私に何の用?」
「あぁ・・・少し金が必要でさ・・・」
「お金?仕事してたんじゃないの?」
「まっまぁそうなんだけどよ。」
何が違うんだろう。そう考えた時タイミングよく頼んでいた御飯達が
やってくる。
兄であるカイジはステーキセット、みつきは美味しそうなフルーツパフェ
を頼んでいて、両者ともとりあえず御飯とデザートに口を付けた。
「(美味しいな〜・・・っていうのはいいんだけど、何があったんだろう)」
自分に云えない事なのだろうか・・・兄の性格は少なからず知っている
方であるから大体察しは付くのだが今回はそうでもなかった。
頬の傷、そして手の縫い目、痛々しい兄の姿・・・



「ちなみにいくら?私も学生なんだからそんなにないんだけど。」
「・・・どのくらい貯金してるんだ?」
「・・・大体・・・・100万近く。」
「!お前・・・なんでそんなに持ってるんだよ。」
カイジが聞いた妹の言葉は驚く金額だった。
現在高校生でありながら100万近く貯めたというのだ。
バイトにしたって、絶対そんな金額にはならないだろうに。
そんな衝撃的な真実をしったカイジはどうしてと聞きたくて
みつきに聞いて見るとパフェのスプーンをカイジの前にやってきて
こういった。


「パチンコ。」
「・・・って、普通のだよな。」
「そ。私運がよくていつも5万〜10万位は勝ってる。
お母さんには言わないでよね。なくから。」
というか未成年はパチンコできないよな!?ともっと驚いていたが
制服きてなきゃばれないから!と反抗して来た・・・可愛くない奴。
「というか100万で返せる額なの?兄さん。」
「!」
「傷とかみてると、ギャンブルで負けたから身体を担保にしたとか
・・・賭けの対象にしたとか・・・そんな風に見えるんだけど。」
ちなみに、ファミレスに行くまでにもう一つみてしまったのだ。
カイジの耳、そこにも縫い目があることに。
パフェをちょこちょこ食べていた手が止まり、下をむいた。




兄が、危ない橋を渡っている・・・しかも命を這う行為だと。




「(私に、何ができる?)」
「・・・心配すんな。やっぱりこうなっちまうか。」
「・・・?」
「悪い。金借りるって云うのなしな!」
はははっと笑いながら美味しそうにステーキを食べるカイジに
じゃあさっきのはなんだったの?と喉から言葉が出かけた。
・・・・一人で、解決するつもりなんだ。
もう、しょうがないか・・・と思いながらもみつきは諦めがついて
「金を借りるなんて100年早い!」と兄に怒鳴り、また
甘い甘いパフェに口を付けた。
結局、兄は嫌いじゃない・・・けど、はやく定職してください。

そんで、とりあえず命を張るようなことはしないでマジで。



「兄さんパフェ食べる?」
「おぉ」
「・・・やっぱりあげない。別で注文して。」
素直になれないからとりあえず察して。
あとはただただ兄との会話を久しぶりに楽しんだ。







ちょっと話しすぎただろうか。
もう流石に家に帰らないととケータイをみたみつきは
思い、兄に告げると兄が席を立ち、会計プレートを手に取った。
次にみつきも席を立つ・・・・
「(そういえば兄さんってあんな時計してたっけ?)」
デザイン的にどうなのよ、とか思っていると会計していたカイジが
こちらを振り向いた。
「なあみつき」
「何?」
「・・・・ここの飯代だけ、払ってくれないか?」




Ok,ok...That is that!!




結局兄はダメな人。
でも、お願いだから無茶しないでよね。
・・・・そして貸した金は今度の洋服代でチャラにしてもらいます!





2011.07.19

初カイジなのに、甘くもない。
ごめんなさい・・・でも妹って生意気だけど実はすっごい
淋しがりやだったらいいな・・・!日常ネタがすきです。


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