旧懐




水が落ちる。
空からの逃げ場のない水滴。
「降ってきたか…」
曇り空を見上げ、ラエは顔をしかめた。
討伐終了後なのが幸いだった。
悪天候でのアラガミとの対峙は不利な点が多い。
この場も早々に去るべきであろう。
急速に強くなる雨足。
同行者へと目を向ける。
転がるアラガミの死骸を前に佇む後ろ姿。
「おいノジア!さっさと戻るぞ」
雨粒が遮るが、それでも声を投げる。
ノジアは雨雲を見つめていた。
目の前の死骸も捕喰させずに。
常ならば、淡々とコアを回収しているはずなのに。
一つ、溜息を吐く。
あいつの奇行は今に始まったことではない。
なんだかんだ付き合いも長くなり、いい加減慣れてきた。
もう少し、好きにさせておきたいところだが、生憎の空だ。
「聞いてんのか!」
声を上げれば、ようやく動いた。
「…あぁ、悪い」
呟くように返し、神機を捕喰形態へと変化させた。





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