対策




「シ〜グ〜ぅ!!」
突然後ろから飛びついてきたニヴ。
シグは慌ててたたらを踏んだ。
「おっと…、どうしたんですか、ニヴさん」
なんとかバランスを保ち、視線だけを後ろに向ける。
ちなみに、シグが持っていた書類も無事のようだ。
「ほ〜こくしょ溜まっちゃったぁ…、助けてぇ?」
うりうりと背中に頭をこすり付ける。
甘えたようなしぐさに、思わず苦笑する。
「また溜めたんですか?」
「んー、だってぇ、任務行くのはたのしーんだよぉ」
ニヴが廻していた腕を離す。
ようやく向き直ることができた。
「報告書提出までが任務ですよ。そもそも、何度も連続で行くから余計に溜まるんです」
ここヒマラヤ支部はアラガミ出現の少ない僻地だ。
否、僻地だった。
アラガミの出現が少なかったため、人員も最小限しか配備されていない。
アラガミの増加傾向に伴い救援を依頼したが、その救援は断られ、仕事だけが増える始末。
ゆえに、支部に戻らずそのまま連続での任務も少なくない。
「シグの方が働き者のくせにぃ〜、な〜んで溜まんないのぉ?」
ニヴはシグの腕をつつきながら、首を傾げる。
「何故と言われましても…。あぁ、でも報告書はすぐに手を付けるようにはしていますね」
「え〜、すぐって言われてもぉ、支部に戻らないしぃ〜」
歯切れ悪く返すニヴ。
シグは未だにつついていたニヴの手を止めた。
「移動時間があるじゃないですか」
シグの言う通り、一つの任務が終了した後、また別の交戦ポイントヘ装甲車やヘリなどで移動する。
その小さな隙間時間を指しているのだ。
「そこで書くのぉ?」
「いえ、さすがに書けませんよ。メモ程度です」
任務終了直後に報告すべきことを算出しておけば、後々書き始める時にはすでに内容が固まっているので、残りは体裁を整えるだけだというシグ。
「ん〜、出来るかなぁ」
視線を彷徨わせ、思案する。
「大丈夫ですよ、慣れれば簡単です」
笑顔で後押しすれば、ニヴは頷いた。
「りょー、こんどから、頑張るね〜」
「はい、次回からはそれでお願いしますね。では今溜まっている分、どうにかしましょうか」
ようやく本題に入ろうと話を進めようとしたところで、ニヴのぽかんとした表情が目に入った。
「お…?ありゃ、忘れてたぁ」
「ニヴさん…」
どうやら報告書が滞る原因は、他にもありそうだ。




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