行楽




あたたかい日差し。
気持ちいいそよ風。
「い〜い天気だねぇ…」
ヒマラヤ支部の屋上で、ニヴは一人呟く。
風の音だけが、静かに応えた。
支部を守る外周防壁の外は荒ぶる神々が蔓延っているとは、とても思えない静けさだ。
地面に座り、空を見上げる。
澄んだ青に、白が映える。
「あ、そーだぁ」
ニヴは立ち上がった。




「ねぇねぇ、皆でピクニック行こ〜」
「は?」
「え…?」
突然のニヴの提案に、面をくらうネロウとシグ。
「ピクニック…!」
ただ一人、リュイだけは顔を輝かせた。
ニヴはその極端な様が見えているのか見えていないのか、そのまま続けた。
「うん、そ〜。あったかい日差しの中を、てくてく歩くのぉ」
「わぁ…!行こう行こう!お弁当作るよ!」
「わ〜い」
リュイはニヴに駆け寄る。
ニヴも屈んで小さくハイタッチした。
「…行ってらっしゃい」
二人が意気投合した矢先、ネロウはソファに寝転がった。
その隣のソファでシグが苦笑する。
報告書をまとめていたのだろう、テーブルに資料と端末があった。
「あれぇ、ネローは、行かないのぉ?」
「あいにく忙しい」
目を閉じ、声だけを返す。
その態度にリュイは顔をしかめた。
「って、また寝る気でしょ!今日何も予定ないってさっき言ってたじゃん!」
ネロウのもとに駆け寄り、頬を膨らます。
ニヴもリュイに続いてゆっくり歩いてきた。
「ネローもいこ〜?ぽっかぽかの日差しの中でのうたた寝も、気持ちいいよぉ?」
しゃがんでネロウの頬をつつく。
無視を決め込んでいるのか、されるがままだ。
眉はひそめていたが。
「……ふふっ」
その様子に、シグは小さく笑った。
「行こーよー!せっかくみんな集まっているのに…」
二人の説得がいい加減煩わしくなったのか、ネロウは起き上がった。
「うるさいなぁ…。大体、外はアラガミばっかだろ」
「ありゃ…、そ〜だねぇ」
はたとニヴは首を傾げる。
今まさに気付いたという表情に、ネロウは呆れたように頭を掻いた。
「どうしようか〜」と笑うニヴ。
リュイはひっそりと拳を握った。
「…屋上はどうですか?散歩は出来ませんが、お弁当は広げられますよ」
タブレットの電源を切り、書類をまとめる。
トントンと、角をそろえた。
「おー、さすがシグ〜」
ニヴは手を叩き、リュイは再び顔を輝かせた。
「これで行けるねぇ」
悪戯が成功したような顔で、ネロウに問う。
リュイもそろってネロウに視線を向けた。
「……仕方ないな」
「やったぁ!お弁当はおにぎりがいいかな?それともサンドウィッチかな?」
「ん〜、どっちも食べたいな〜」
「じゃあ、両方つくるね!」
「手伝いますよ」




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