承認



「きれいだ。」
唐突な、言葉だった。
するりと、髪を一房すくう。
控え目な照明の中で、光を反射する髪。
少し緑がかった、色素の薄い髪。
いつもは結われているそれが、解かれて背中に広がっている。
「……どうした?」
されるがままだったノジアがようやく口を開く。
ちらりと視線だけを後ろに向けた。
「…髪、きれいだ。」
その後ろで、ラエがもう一度言葉を発した。
ゆっくり紡いだ後、うなじに顔を埋める。
髪がサラサラと頬をくすぐった。
「……そうか。」
ノジアも諦めたのか、ただ興味がないのか、視線を戻した。
ぼんやりと前を見つめる。
その間にも、首筋の感触は徐々に増えていった。
こすりつけるように動く感触から、ぬるりとした暖かい感触へ。
肩に添えられていた手の平も、背中へするすると下がっていく。
ぞくりとした。
「……ラエ、っ!」
途端に、首筋に感じた鋭い痛みに息を詰まらせる。
その間に、背中を這っていた手が腰を伝って前に滑ってきた。
「…悪い。ちょっと付き合ってくれ。」
小さく、零れ落ちた言葉。
縋るように、触れる肌。
すぐ後ろで、感じる吐息。
「…わかった。」
廻された腕に手の平を重ね、体温を分ける。
振り向かずに、目を伏せて。
彼が出来るだけ、遠慮をしないように。
「……好きにしろ。」




――――――――――


あとがき


お題「長い髪」「契り」「物言うネコ」でした。
うっかりホモになりました。
すみませんでした。
しかし、こんな三つのお題だされたら「ホモを書くしかない!」とか思った私の頭はすでに手遅れです。
続きは皆様のご想像にお任せします。
物言うネコが今ひとつ表現出来なかったのが悔しい限りです。

人肌恋しい時ってありますよね。




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