様相


音をたてて崩れ落ちた。
オラクル細胞は活動を停止する。
その前で、ハクアが一息を付いた。
「片付いた?」
声を投げた先、後方。
「当然だ。」
ラエも神機を下ろす。
決して簡単な任務ではなかったが、この二人ならば関係はない。
ラエが任務完了の報告をしようと、端末を操作し始める。
「ねぇ、ラエ?」
「あァ?」
それを遮るように、かけられた声。
適当に返ってきた返事。
ハクアは苦笑した。
「…なんで喧嘩腰なのさ。そんなに嫌われてんの?」
その言葉に、ラエはちらりと目線を合わせ、
「分かってんなら察しろ。」
また、視線を端末に落とす。
神機使いとして配属されて約三年。
確かに色々と厄介事を任せた記憶はあるが。
「随分だねぇ…。そんなに言われると、さすがのオレでも弱音吐きたくなるんだけど。」
いつも通り、人を食ったような笑みを浮かべながら言う。
気にした様子など微塵も見られない。
それを見てか、ラエは嫌悪感を露わにした。
「うわぁ…、露骨な反応。」
くつくつと喉の奥で笑う。
ラエが端末を操作する手を止めた。
何か言いたそうに眉をひそめる。
頬を緩ませたまま待てば、不服そうに顔を背けた。
「………わねぇだろ。」
小さく、吐き出された。
それは伝えるか伝えないか、宙に浮いたまま行き場を失っていた。
中途半端に拾ったハクアが真意を問う前に、ラエが動いた。
「…言わせねぇよ。何回お前の尻拭いしてきたと思ってんだ。」
明確に、意思を持った言葉。
伝わった言葉は、脳にしみ込んだ。
そのままラエは背を向け、歩き始める。
離れていく距離を追わず、視線を落とす。
変わらず、そこにある大地。
変わらず、その上に立つ自分。
一つ、息を吐き出す。
つかえを取るように。
口角が上がった。
「ラエってさぁ…」
先を見れば、アナグラと連絡を取っているラエが居た。
その有りように、思わず笑った。
「って、聞いてないし。」
さっさと帰投準備を始めるラエに並ぼうと、一歩踏み出した。



――――――――――


あとがき

まずは、澪玖様勝手にキャラクターお借りして申し訳ありません。
そして、ありがとうございます。

ハクアさんとラエの関係性がツボだったので書いてしまいました。
ハクアさん、好きです。




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