前後




「イーギス。」
「ふひぁい!!」
突然かけられた言葉。
思わず肩を震わす。
「すごい声。」
後ろから、クスクスと笑う声が聞こえた。
もう声の主など分かっている。
ようやく振り返れば、
「もー、びっくりさせないでくださ…うぉわ!」
反射的に元に戻ってしまった。
目の前には、先程まで操作していたターミナルの画面。
「どうしたの?」
「いえッ!別に!何でも!?」
後ろからアルトの問う声が聞こえてくる。
でも今は、とにかく上がった心拍を抑えたかった。
予想より近くにアルトが立っていたので二度驚いてしまったなどと、恥ずかしくて言えそうにない。
振り返らないイーギスの様子を察したのか、アルトが話題を変えた。
「ね、これサンタ?」
ぽふぽふと、背中に布があたる感触がする。
フードを触っているのだろうか。
「あ、はい。あったんで着てみました〜。」
今日は寒さにも慣れ始めてきた12月後半。
一昔前はクリスマスイブと呼ばれていた日だ。
何を祝っていたかはよく知らないが、とにかくめでたい日だったようだ。
赤い布地に白色のファーは、サンタという人の衣装だったらしい。
「どうっすか?」
視線だけ振り返る。
少しだけ見えたアルトは爽やかに笑っていた。
「うん、似合ってるよ。」
「ありがとうございまっす!いやぁ、照れますわ〜。」
わざとらしく頭をかく。
すると、後ろからアルトの左腕がターミナルの画面を抑えた。
加えて、右肩には手の平のぬくもり。
「……でもこれ、誘ってるの?」
「え?」
小さく、呟かれた言葉。
拾えずにいたら。
「…ひゃっ!」
身体が跳ねた。
首すじに触れる、暖かくて濡れた感触。
「ちょっ、はッ…。アルトさ…んッ!」
その正体を悟り、顔に熱が集まる。
「あんまり声だすと聞かれるよ?」
「だっ、だってッ…。やっ、…んあ!」
洩れそうになる声を必至に抑える。
そうだ。
ここはアナグラのエントランス。
一階には人もいるのだ。
いつ、誰に気付かれてもおかしくない。
「イーギスは本当、…ここ、弱いよね?」
耳にかかる吐息。
身じろぎしようにも、ターミナルとアルトに挟まれて動けない。
「ま、待ってくださ…、こんな、トコでぇ…っ!」
「…部屋に行こうか?」
「…はい。」



――――――――――


あとがき

まずは、キャラクターを貸してくださった子犬様、ありがとうございました。
そしてもう、本当にすみませんでした。
調子に乗りました。
苦情は受け付けます。

インフラにて、壁ドンならぬターミナルドンしていただいたので、つい書いてしまいました。
ターミナル画面から戻ったらすぐ後ろにアルトさんがいらしたので、驚き過ぎてまたターミナル画面開きましたよ。


ワイルドサンタって、つまりこういうことだと思うのですが、どうでしょう。




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