事実




口腔内に広がる鉄の味。
何度か咳き込んで、溜まった血を吐き出した。
無残に広がる赤色。
「……はぁ。」
ノジアは壁に背を預ける。
もはや立っているのも億劫だった。
中型種一体の討伐任務のはずが、何時の間にか大型種を複数同時に相手にしていた。
数体は倒すことが出来たのだが、多勢に無勢である。
アナグラに撤退支援要請を試みるも、運が悪くこの状況に対処出来る腕利きの神機使いは出払っていた。
したがって、到着までに時間が掛かるとのことだった。
そして今、何とか多数のアラガミから身を隠したところである。
屋内に身を潜め、息を殺す。
まだ近くでアラガミの足音が聞こえる。
見つかるのも時間の問題だった。
ノジアは一つ、息を吐き出す。
足元に広がる赤色。
額から、腕から、足から、伝え落ちる生暖かい液体。
痛みはとっくに飽和していた。
必死に意識を繋ぎとめる。
こんな所で意識を手放せば、文字通り死を意味する。
まだ、死ぬわけにはいかない。
まだ、やらなければならないことがある。
まだ。
「ノジア君!」
突然聞こえた音。
咄嗟に音の先へ向く。
すると、アイリーンが驚いたような顔をし、一瞬動きを止めた。
その疑問を脳に伝えると同時に、自分の手元が目に入った。
反射的に向けた腕の先に、握られた拳銃。
それでも構わずに、アイリーンは近付いてきた。
「ノジア君、大丈夫!?」
「……悪い。」
一つ言葉をこぼし、銃を下げる。
アイリーンは特に気にした様子もなく、眉根を下げて告げた。
「ひどい怪我…!ごめんね、もっと早く来てあげられなくて…。」
「…いや。」
ノジアは首を横に振る。
先程生まれた疑問をはらうように。
「とりあえず、歩ける?この場はお兄ぃ達に任せよう。」
「…あぁ、悪い。」



――――――――――


あとがき

まずは、キャラクターを貸してくださった子犬様、ありがとうございます。
短編組シリアス三連発第一弾でした。
時系列は2071年でお送りしました。
そして、アイリーンさんにひたすら謝りたくなりました申し訳ない…。
ノジアはいつでも2本は拳銃携帯している人です。
色々余裕がなくなってくると、咄嗟に銃を向けてきますのでご注意を。





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