甘美



「ノジアさんノジアさん!良いもの見つけました!!」
開口一番、言い放った。
ノジアがエントランスでターミナルを操作していたら、イーギスが駆け寄ってきたのだ。
ノジアは首を傾げる。
「見つけたっていうか、貰ったんですけどね。とりあえず、今ヒマですか?」
嬉しそうにキラキラと目を輝かせている。
特に用事もないので頷けば、イーギスはより一層笑った。
「こっち来てくださいっ。」



「じゃんじゃじゃ〜ん!」
着いた先はイーギスの私室。
効果音付きで自慢げに見せたのは、綺麗に包まれたチョコレート。
透明なラッピング袋に入ったそれは、リボンで結ばれていた。
今では全く見かけることのなくなった嗜好品だ。
「…おぉ。」
ノジアは小さく感嘆の声を上げる。
それを満足そうに見つめ、イーギスはノジアの隣に座った。
「ね?ね?良いものでしょ?」
顔を覗き込みながら、リボンをほどいていく。
現れた甘味。
「ほら、あ〜ん。」
丸いチョコレートをノジアの口元へと持っていく。
「ん。」
ためらうことなく口を開ける。
そこへチョコレートを入れた。
「どっすか?」
イーギスから期待の眼差し。
ノジアはそれを口の中で転がしながら、頷いた。
「…うまい。」
「でしょ〜。これ手に入れるの大変だったんすよ〜。褒めてくださいっ!」
すすっと屈んで頭を差し出す。
ノジアはその頭を撫でた。
「よしよし。」
「わーい、先輩に褒められた〜。」
何回か撫でてやれば、満足したのか顔を上げた。
「…ところで、コレどうしたんだ?」
問いに、ニヤリと人差し指を立てて答える。
「ふふっ、これはとある裏ルートからの一品でして…」
しかし、ノジアのジトーッとした視線に耐えられなくなったのか、途中で止まった。
「あぁ、もう。コレあげるんで許してください。」
献上するように、包みを差し出す。
ノジアはまだ何か言いたげだったが、何も言わず受け取った。
一粒取り出して、舌にのせる。
「……うまい。」
体温で溶けていくチョコレート。
ちらりと見れば、イーギスは献上したポーズのまま固まっていた。
「ほら。」
「なんすか?」
イーギスが頭を上げる。
その先ではノジアがチョコレートを摘まんでこちらを見ていた。
「あーん?」
小首を傾げてイーギスを待っている。
イーギスは少しだけ眉をあげ、それからすぐに口角を上げた。
「あ〜ん。」
差し出された指に口付け、チョコレートを受け取る。
それはどろどろと蕩け、口腔内で混じり合っていく。
「…ん、甘い。」
ぺろりと唇を舐める。
甘美な味が舌に触った。
「ね、もっとくださいよ?」
ぎしりとソファが軋む。
近づけば、指についたチョコレート舐め取っているノジアと目が合った。
その顔は少しだけ笑っている。
出会った当初は分からなかった笑み。
イーギスもつられるように頬を緩めた。



――――――――――


あとがき

この二人の腐向けが読みたいと仰って下さった方がいらしたので、調子に乗って書きました。
ありがとうございました。そして、すみませんでした。

この二人ですと、普通にあーんしあいっこするくらいのナチュラルホモだと思います。





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