都合


「お、おぉ…!」
目の前で燦然と輝く料理。
「アリサさんに聞いて作ってみちゃった。」
ムツミがはにかむ。
器に乗せられた赤いスープ。
その中から覗くニンジンやキャベツ、牛肉。
「これが世界三大スープと名高いボルシチっすか!?俺初めて食べます…!」
かつてアラガミが蔓延る前は食文化もかなり発展し、世界中で交流があったらしい。
世界各地の料理を食べつくした先人達がたたえた料理の数々。
そのうち目の前のボルシチは、世界三大スープとまで謳われていたようだ。
「初めて作ったから、上手く出来たかどうか分からないけど…。」
少しだけ眉を寄せるムツミ。
しかし、一度彼女の料理を食べたことがある人なら分かるであろう。
彼女の料理の腕前は確かだ。
「絶対美味しいですって!というわけで。」
期待に胸を膨らます。
彼女に教わった極東の文化を実践する。
両手の平を合わせて、
「いただきま…」
言い終わる前に、けたたましいサイレンが鳴り響いた。
「ぎゃぁあ!!びっくりした…。」
「アラガミ…」
イーギスは背筋を伸ばし、ムツミは不安そうに宙を見上げる。
一拍置いて、イーギス一瞬で上がった心拍を押さえつけるように胸を抑えた。
「でも大丈夫っすよね?今は第一部隊もいますし……。っ全く、メシぐらい静かに食わしてくださいよ〜…。」
極東支部は激戦区の名の通り、緊急出撃は日常茶飯事だ。
したがって、いつでも支部内にある程度神機使い達が待機している。
「うん…、そうだよね。」
パッと笑顔を作って見せたムツミに笑顔を返しつつ、イーギスは再度手を合わせる。
「改めて、いただきま…」
『感応種が出現!ブラッドは直ちに出動願います!』
響いた放送に、ピシリとイーギスが固まった。
「あ…」
チラリとイーギスを覗き見る。
ゆっくりと手を離したのが見えた。
「…ムツミさん。」
「あ、うん。ちゃんととっておくよ。」
「すんません、ありがとうございます。」
離れた手は、机に置かれる。
イーギスが俯いた。
「…くっそ、このヤローッ!出来たてが一番うまいんすよー!!」
大きな音を立てて立ち上がり、すぐさまラウンジから出て行く。
神機使いは今日も忙しい。




――――――


おまけ

「ムツミさんをお嫁さんに欲しいっす。」
「…そしたらお前はロリコンの称号を得るがな。」
「はぅ!?」
アラガミ討伐後、ギルバートの一言にショックを受けたイーギスが居たそうだ。




あとがき

ムツミちゃんの手料理食べたいです。
ここではお金払うのか、それとも給料から一定量天引きなのかとても気になります。
そもそも給料制なのかも気になります。
あの時代に牛肉あるのかも気になります。
合成食材ですかね。








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