喪失




やわらかい日差しが降り注ぐ。
陽光を反射して、きらめく花々。
それらに囲まれるように佇む墓標。
「先輩、ちょっとぶりっすね。」
その前で、イーギスが立ち止った。
かるく手をあげて、腰を下ろす。
「いやー、最近忙しかったもんで。」
つらつらと、近況を報告する。
アナグラへ大量のアラガミ接近。
それに伴って、サテライト防衛班の帰還。
喚起能力による戦力増強。
そして、迎え撃ったアラガミ。
「そんな感じで、防衛戦も無事終了しました。さすがに疲れましたわ。」
イーギスは苦笑して伸びをする。
まだ疲れが残っているような気がする。
いつもなら、労いの言葉が掛けられるはずだった。
しかし、庭園にあるのは一人の声だけで。
輝く花が遠くに感じる。
これは、いつ見た風景だったか。
「…あの時、俺が…」
イーギスの口角が上がる。
「…なんて、無意味な仮定ですよね。」
そんなもしもなんて、意味がない。
分かっているのだ。
「きっと先輩なら、そういう…。」
ロミオなら、そんなこと笑い飛ばしてくれる。
明るくて、まっすぐで。
だから、笑い飛ばしに来てほしい。
「……なんで。」
零れ落ちた言葉。
顔を歪めて、笑った。
「なんで皆、…責めてくんないんすか。」




――――――


あとがき

ようやく書きたかったものを消化出来ました。
少し満足です。

そういえば、タイトルに漢字二文字が続いていますが、最近は狙ってつけています。
いつの間にかそういう流れになってしまいました。




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