旋風



機械が呻く。
規則的に流れる音。
カタカタとキーボードが揺れる。
4つのモニターそれぞれに繋がる大きな装置。
装置の壁に埋まった先も、複雑に絡みあっているのだろう。
そんな情報を処理するソーマの元に、一つの足音。
「ソーマ博士〜!」
景気良く扉が開かれた。
「…博士はやめてくれ。」
何度目かになる言葉を吐き、一旦手を止める。
顔を上げれば、ニヤリと笑うイーギスと目が合った。
「ふふっ。博士は博士だから博士って呼びますよソーマ博士?」
わざとらしく顔を覗き込み、早口でまくしたてるイーギス。
ソーマは思わず視線を外した。
「…イーギス。」
「冗談っすよ、先輩。そんなこんなで!頼まれてた素材持って来ました〜。」
くるりとその場で回転し、アタッシュケースを宙に掲げた。
まるで効果音が付きそうなほど得意気だ。
反対に、ソーマは眉を顰める。
「…頼んだ覚えはないが。」
「ハハッ!朗報ですよ、欲しがってた素材持って来たんすから。」
そう言って、アタッシュケースを開けるイーギス。
その中にはアラガミのコアが並んでいた。
「イェン・ツィーのコア、切れかかってたんすよね?」
「そうだが……。」
ソーマは言葉を濁す。
イーギスの言うとおり、確かにイェン・ツィーのコアは無くなりかけていた。
元より感応種はブラッドが極東に来てからようやく討伐出来るようになったのだ。
故に、未だ討伐数も少なく、コアも少ない。
したがって、すぐにサンプルが無くなってしまうのだ。
けれど、そもそも彼にそんな話をした覚えが無かった。
「ま、余ってたんで倉庫から出して来ただけなんすけど、良かったら貰ってやってください。」
アタッシュケースを閉じて、机の上に置く。
ソーマが疑問に口を開く前に、
「あぁ、俺良い奴!じゃ、程々に頑張ってくださいねソーマ博士〜。」
イーギスは胸に手を当て、自らを指したかと思えば、ひらひらと手を振り早々に研究室を後にした。
戻ってきた機械音が耳に入る。
残されたソーマは、遅れて一人呟いた。
「……何なんだアイツ…。」





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