灯火




ラウンジに差し込む光。
それを浴びて、二人は並んで腰掛ける。
その前のテーブルには、資料が拡がっていた。
「次の任務、ハンニバルと感応種イェン・ツィーですが、まずはハンニバルをイェン・ツィーから引き離して戦うのが王道かと思われます。」
机上には任務の詳細、作戦エリア内の地図、討伐対象の観察記録等、様々な情報が拡がっている。
それらにザッと目を通しながらイーギスは答えた。
「だな。作戦中は無線で常時居場所を教えてもらうか。」
「はい。但し防壁前なので、防壁に近付いて来た場合は…」
今回の任務の作戦エリアは外周防壁の比較的近くだ。
すぐさま討伐しなければならないほど近くではないが、油断は出来ない。
観察記録によれば、積極的にアナグラに向っているというわけではなく、その場に留まっているようだ。
しかし、それも何時動き出すか分からない。
イーギスは資料を机に置いた。
「感応種だから俺らが向かった方がいいよな。そん時は二手に別れるか。」
「そうですね。」
シエルが頷いて返す。
シエルはすでにこれらの情報は頭に入っている。
何故なら、ブラッド隊の任務の作戦参謀はシエルだ。
まずシエルが先に目を通し、作戦原案を持った上で、隊長であるイーギスと話を詰める。
ブラッド隊ではこれが常である。
「イェン・ツィーだし、そっちの奴等はあくまで時間稼ぎと、アナグラに侵入させないようにってところか?」
シエルは決めた作戦を控えていく。
この後ブラッド隊が全員集まり、作戦を伝える。
そしてその時に最終確認となっているのだ。
「了解しました。次にハンニバルへの対処ですが、素早く済ませたいので少々危険ですが逆鱗へ攻撃を集中させて討伐するのはいかがでしょうか?」
もちろん、作戦を窮屈に決めるわけではない。
あくまで基本方針として、定めている。
「そうだな、イェン・ツィーも気になるし、問題は結合崩壊後だけど…」
「結合崩壊後の逆鱗には貫通弾、もしくは氷、雷属性が効果的です。」
さらりと答えるシエルに、イーギスは笑った。
「なるほど。じゃあシエルを攻撃の主軸として…」
「私ですか?」
ハンニバルの逆鱗には貫通弾が有効だ。
そして貫通弾はスナイパー型の銃身と相性が良い。
ブラッドの中でスナイパーを扱うのはシエルとイーギスだ。
「あぁ、シエルの方が銃の扱いが上手いだろ?俺らがアラガミ弾の受け渡しと、前線で気を引いて……」
ふと、思う。
二人で机を並べて、同じものに向き合っている。
少し前までならば、想像するだけだった景色。
それが今、当たり前になってきている。
「……どうした?」
シエルの様子に気付いたイーギスが手を止めた。
かち合った視線に、目を細める。
「…いえ、何でもありません。」
窓から差し込む光はこんなにも、温かかった。





――――――


あとがき

予想外に真面目な話になりました。
当初の予定とは全然違いますが、シエルちゃんとの話が書きたかったのでスッキリしています。
今度はもう少し緩い話が書きたいですね。




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