渇き




"隊長!"
「キアード…? 」
目が、覚めた。
つまり今のは都合の良い幻想、ということになる。
馬鹿か、俺は。
彼奴は目の前で介錯されたじゃないか。
クイーンへと変貌する前に、ルイが。
俺は、お前に何をしてやれた。
死んで、吸血鬼として蘇って、戦わされて、殺されて、また戻って、そして俺が殺した。
そしてまた巡り会えたと思ったら、またお前はいなくなった。
奇跡に、浮かれてしまったのか。
この世に都合の良い希望なんてないのに。
無いと知っていたからこそ、せめて救いのあるように足掻いていたはずなのに。
あの時、お前の身体にはすでに幾つの神骸があったんだ。
何故、気付いてやれなかった。
何故、任せてしまった。
この眼は何のためにあったのか。
自分が受け継げば良かったのではないか。
そんな思考ばかりが胸を刺す。
もうずっと、奥底にしまい込んだはずの思いが膿んで蝕む。
棺の中で苦しんでいた継承者に、手を差し伸べていたお前はどこに行ったんだ。
器として壊しづつけるしかなかった俺と違って、安らかに逝かせたお前は。
死んでも、蘇ってきたじゃないか。
お前を見つけた時のあの高揚が忘れられない。
姿を見、剣を交え、太刀筋から溢れ出した懐古。
あぁ、出来るなら。
あの感情を、もう一度。




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