oui




「…はい。はい、分かりましたって」
「本当か?」
深層へ探索に行くという彼に、再度尋ねる。
「昔から隊長は心配性ですねぇ」
「貴様が忠告を聞かないからだろう」
「聞いてます…、聞いてはいます…よ」
視線を逸らしながら言い淀む姿に、溜息をつく。
適当に流す素振りはないくせに、忠告した通りの不手際を起こす。
いつまで此奴の面倒を見なければならないのか。
「そこまで心配なら付いてこればいいじゃねぇか」
二人のやり取りを遠目から見ていたヤクモが苦笑する。
今回のバディはヤクモだ。
「こちらにはこちらの任務がある」
ヤクモには目も合わさず吐き出すように言う。
その隙をついてか、キアードがぐいっとジャックを押し退けた。
「そうです、ジャックさんはジャックさんの仕事をこなしてください。ごめんヤクモ、待たせた」
ヤクモに小走りで駆け寄るキアードを目で追う。
その先にいるヤクモ。
「おい、ヤクモ」
次はヤクモを呼び出した。



「何話してたんだ?」
ようやく深層へと足を向ける。
その道すがら、キアードが話しかけてきた。
「お前がどっかいかねぇように、ちゃんと見とけって」
くしゃっと頭を撫でる。
「ほんとに、ごめん。ヤクモ…」
されるがまま、薄ら笑いを浮かべている。
「はは」
正直二人のあんなやり取りを見るのはもう慣れている。
もはや面白味すら感じてしまう辺り、相当数だとは思うのだが。
「これでも頑張ってるんだけどね。さ、行こうか」
撫でられた手の隙間から、寂しそうな眼が見えた。
そのまま先に進んで行くキアード。
「……親が親なら、子も子だな」
大剣を担ぎ直し、キアードを追う。
この先の二人のやり取りを見るためにも、無事に生還しなければと、気を入れ直した。




[ 8/14 ]

[*prev] [next#]
[目次]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -