21.5話「君の隣に」

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カナエはいつも名前と待ち合わせる団子屋でぼんやり空を眺めていた。
約束の時間を過ぎている。
名前が遅刻するのは今に始まったことではないから慣れている。

ふと気がつくと遠くから必死に走ってくる名前が見えた。


「そんな慌てなくても大丈夫よ〜」
「ごめんなさいカナエ!」


2人でお茶をしながら近況報告をするのが当たり前になっていた。

名前は来た時からなんだかソワソワしていることにカナエは気付いた。
団子を食べるペースも早い。

「名前、なにかあったの?」
「実はね、知り合いのご夫婦にお見合いしないかって言われたの」
「えっ!お見合い?」

顔を赤らめ、珍しく照れた様子の名前。

「冨岡くんはどうするの?」
「いや、彼には相手にされてないし…」
「本当に好きなんでしょう?」
「もちろんよ!いつ死ぬかわからない私たちだから、後悔しないようにつねに愛の告白をしてるわけで、ふざけてるわけじゃないんだから」

名前の言う通りだ。
自分たちはいつ死んでもおかしくない。
それは明日かもしれない。
だからこそ、名前は本当に好きで好きでしょうがない冨岡義勇に本音をぶつけているのだろう。
純粋で意外と大胆な彼女らしいとカナエは思った。


「お見合い相手の人、私のこと好きなんだって。この前その方からお花が届いたの」
「まあ!素敵じゃない!」
「…義勇くんには相手にされてない。でも、私はやっぱり義勇くんが好きだから。お見合いは断ろうと思うの」
「いいの?」

名前はコクリとうなずく。
きっと意思を固めるために今日、カナエに相談しようと思ったのだろう。


「私は後悔したくないから」
「名前らしいわ」
「さっきもここにくる前まで義勇くんと一緒だったんだけどね。体術の手合わせしてもらってたの。やっぱり彼、男の人なんだなぁって思った。力じゃ全然敵わないわ」

意外にもストイックな一面がある名前だ。
休日でも鍛錬は怠っていないことにカナエは密かに関心した。
それに幸せさそうな名前の笑顔。

「本当に冨岡くんが好きなのね」
「うん。好き。私今すごく幸せよ」






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