22話「存在していたい」

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真菰は錆兎とも再会した。
美しく成長した真菰を目の前にして、錆兎は柄にもなく大泣きしていた。
鱗滝もまた泣いて喜んだ。

その場で1人だけ、浮かない顔をした人物。
冨岡義勇だった。

それから真菰はゲストハウスに泊めてくれと頼み込んできたが生憎予約客で一杯。
錆兎が住んでいるゲストハウス横の部屋に泊まったようだった。

もちろん義勇はその日はゲストハウスに泊まらずにアパートは帰り、早朝に出勤した。
その時すでに真菰は起きて仕事の手伝いをしていた。

昼間になると真菰はカフェでのんびり読書をしている。
錆兎は手が空くとカフェで鱗滝と話す真菰へ会いに行き、今までのことを語り合った。
それを義勇はぼんやりと眺めていた。

「私ね、記憶はあったんだけどどうしてもやりたいことがあったの」
「やりたいこと?」
「世界を見てみたかったんだあ。世界って本当に広いのね。だから私、今はCAしてるの」
「CA?」
「ふふ、錆兎知らないの?キャビンアテンダントよ」
「おまえが?」
「そう。だからあんまり日本の雑誌とかテレビを見てなくてさ、最近やっと気づいたの。このゲストハウスとても外国人旅行客に人気なのね」
「ああ。英語はまだいいんだが、他の言語だとなかなか苦労する。義勇と勉強中だ」
「私も力になりたいな…」


義勇は名前のことばかり考えた。
あの時、真菰との再会で全く周りが見えていなかった。
きっと、いや確実に名前は勘違いをしているだろう。
だがそれを名前にどう伝えたらいいのか分からなかった。
こんなこと今まで体験したことがあるはずない。
目撃していた炭治郎に相談してみようか。

「ねえ、義勇」
「!なんだ」

ぼんやりしていて気づかなかったが、既に錆兎はいなくなっていた。
目の前にいる真菰にどきりとする。

「あのさ、ごめんね」
「なにがだ」
「ほら、私が義勇と再会した時に女の人が一緒にいたでしょ?彼女じゃなかったの?」
「違う」
「…でも、あの女の人に勘違いさせちゃったよね。ちゃんと話さないとだよ?」
「…」

真菰はなぜか少し怒ったようだった。
頬を膨らませて義勇をギロリと睨みつけた。

「聞いたよ?鱗滝さんに。ずっと義勇が好きだった人なんでしょう?なんでそんな消極的なの?」
「…おまえには関係ないだろう」
「関係ないけど!男らしくないよそんなの!せっかく過去の記憶があるんだから、ちょっとはあの頃よりも成長しなよ!」

そう言い残し、真菰は二階のゲストハウスへと戻ってしまった。
鱗滝と、カフェの客全員の視線が痛かった。



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