11話「君のことなら何でも知ってる」

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しばらくすると注文したラーメンが運ばれてくる。
名前は大盛りの義勇の味噌ラーメンを見て意外に思った。

(こんなにひょろひょろした人なのに大盛り食べれちゃうんだ…)

「どうした?」
「あ、いえ…!なんでも!いただきます!」

パッと自分のところへ運ばれてきた塩ラーメンを見て名前は目を輝かせた。
小鉢に自分の好きな柚味噌が乗っていたからだ。

「冨岡さん、私すごく柚子好きなんです!塩ラーメンにして良かった」
「…そうか」

義勇は満足そうに笑う。
目の前の名前は記憶の中の彼女と変わらず、好物を目の前に目をキラキラ輝かせていた。

そして彼女は本当によく美味しそうに食べる。
甘露寺や煉獄、いや、どちらかというと甘露寺のように幸せそうに食べることを義勇は知っている。

「ん〜〜美味しいです!この柚味噌が良いアクセントですね!さっぱりしていて食べやすいです!」
「そうか」
「冨岡さんすごいですね。私の好みが分かっちゃうのかも」
「…そうだな」


もちろん、おまえのことならよく分かる。
ずっと側で見てきた。
知ろうとしなくてもおまえが自ら好みを俺に伝えてきた。

それを思うと思わず笑いそうになる。
目の前の名前はラーメンに夢中だ。
あの頃のように幸せそうに食べる姿を見るとだんだん自分も腹が減ってくる。

「…チャーハン追加で」
「えっ」

ちょうど近くを通りかかった店員にそう告げると名前は顔を上げた。

「どうした」
「いや、そんなに食べるんですね」
「…ああ。それがどうした」
「冨岡さん、なんか細く見えるから、あんまり食べないのかと思ってたので」
「……筋肉はある」
「み、見せなくても良いです!」


ガバッと服をめくろうとする義勇を名前は必死に止めた。
顔を真っ赤にして目を閉じて、義勇の体を見まいとする。

(こういうところは昔と違うな…)


昔であれば名前の近くで着替えしようとすると「きゃーきゃー」言いながらもチラチラ見ていたのに。
そこは慎ましくなったからよしとしよう。


「今日は久しぶりにおまえと食べるから腹が減った」
「……?久しぶり?」
「………すまん。忘れてくれ」
「…忘れられないですけど」
「…………女と食事をするのが久しぶりだ」

本当は先週、姉と2人で食事をしたが。
名前は「そうなんですね〜」とさほど気にしていない様子で、なんとかごまかせたようだった。


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