6話「夫婦と仲間」

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名前は義勇と、出迎えてくれた4人と共に屋敷へ導かれた。
今まで見たこともないような大きな庭や部屋に開いた口が塞がらない。
ポカンとしてキョロキョロ辺りを見回す名前を見て宇髄が笑う。

「アホ面だな」
「…宇髄さん酷いです。もうお客様じゃないから言いますけど宇髄さん苦手です」
「なっ…」
「あら、名前さん意外と言うんですね」

宇髄から距離をとって義勇の背中に隠れた。
義勇の袖をそっとつまむ名前。
当の本人である義勇は妻の意外な姿を見て、さらには頼りにされて内心感極まっていたのだが誰もそれに気づかない。


他の柱は先に行き、義勇に通された部屋は意外にも小さい部屋だった。
客人の待合室だろう。

「お館様が、会議が終わるまではここで待つようにとのことだ」
「わかりました。あ、これ、忘れ物です」
「ありがとう。助かった」

名前は義勇を見送り、部屋で会議が終わるのをじっと待った。



柱合会議が終わると義勇と共に産屋敷耀哉がやってきて、軽く挨拶を済ませた。
最近は病気の進行が早くなってきたためあまり出かけられない、会いに行けず申し訳なかったと言われ名前と義勇が逆に申し訳なくなる。

「また会いに来ます」
「ありがとう名前。待っているよ」

最後に産屋敷は義勇に「幸せになるんだよ」と言って自室へ戻った。


「…じゃあ、私帰りますね」
「もう夜も更けている。近くに宿があるからそこに泊まって明日にでも帰ろう」
「義勇さんも一緒に帰れるんですか?」
「ああ。任務は明日入っていない」


屋敷から出てみると外には柱達が待ち構えていた。

「きゃー!名前ちゃんお久しぶりね!私のこと覚えているかしら?」
「甘露寺さん!もちろんです。あの時はパンケーキありがとうございました!」
「また一緒に食べましょう。あ、こちら蛇柱の伊黒小芭内さんよ」
「はじめまして、冨岡名前です」
「……ああ。よろしく」
「わあ、綺麗な蛇ですね!」
「…触ってみるか?」


甘露寺から紹介された手前、今日は変な発言はできない。
伊黒は大人しく名前と挨拶を交わした。

甘露寺と伊黒と話していると後ろから肩を叩かれて振り返る。
義勇ととてつもなく大きな男がいた。

「名前、こちらが悲鳴さんだ」
「悲鳴嶼行冥だ。南無…」
「あ、はじめまして。冨岡名前です」

見上げる首が痛い。

それからぼんやりしていてこちらに興味のなさそうな少年、時透無一郎とも挨拶を交わして、柱達から逃げるようにして名前は義勇と共に宿へ入った。


「今日はすごく疲れてしまいました」
「大丈夫か。無理をさせてすまない」
「私がしたことですから、義勇さんが謝る必要ないです」

名前は義勇のためにお茶を注ぐ。
茶柱が立った方を義勇へやった。
お茶を飲んで2人でほぉ、と一息つく。

「でもみなさん良い人で、私安心しました」
「…そうか」
「今度は疲れていない時に、一人一人に会いたいです」

困ったように笑う名前。
つられて義勇も眉をハの字に曲げる。

「だがもう一人で来たりするな。道中何があるか分からない」
「ふふ、わかりました」

小言のような、義勇の不器用な優しさに名前は思わず微笑んだのだった。


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