2話「期待を込めて」

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土曜日。
冨岡義勇、竈門炭治郎、禰豆子は錆兎のアパートに集合した。
来月から始まるゲストハウスの準備をするためだ。

ゲストハウスは市内の外れにある。
古民家を昨年から錆兎と義勇が改装し、人を招けるような状態にしたのだ。

一階部分はカフェになっていてゲストハウスを利用している客はもちろん、泊まっていない人たちも気軽にランチなど楽しめるようになっている。
二階と三階がゲストハウスの宿泊客が利用する専用のスペースで、ダイニングやシャワールーム、ベッドルームなどが設置されている。

今日は大掃除だ。

「いよいよだな」
「ああ」

錆兎は目をキラキラさせて建物を見上げる。
大正時代に建てられたという洋風な外観が、あの頃を思い出させる。

「会えるといいな」
「ああ」

錆兎が名前のことを言ったのか、それとも真菰のことを言っているのか義勇には分からなかった。
だが、どちらにも会いたいと思った。


「義勇さ〜ん!錆兎〜!こっちの窓拭きは終わりましたよ〜」

遠くから炭治郎の大声が聞こえてきて、2人は顔を見合わせて笑った。
兄を嗜めるような禰豆子の声もかすかに聞こえる。


「そうだ義勇。月曜、ちゃんと有給とれたのか?」
「とれた」
「ならよかった。10時半だからな」
「わかっている」

明後日の月曜日、デザイナーと打ち合わせの予定だ。
ホームページやチラシ、名刺やフライヤーを作ってもらうのだ。

錆兎が直感で選んだデザイン会社「ウィステリア」
日本語で「藤」を意味する。

やはり過去の記憶のせいか「藤」には反応してしまうものだ。
ゲストハウスの名前もまさに「ゲストハウス藤ノ花」という。
もしかしたら過去の仲間がその名に反応して来てくれるかもしれない。
そう思って錆兎が付けた名だ。


もうすぐ雪が降る。
オープン予定の1月24日には少しは積もっているだろうか。
義勇は曇り空を見上げた。
明日は晴れると言っていたから、洗濯物を干そうと決めている。

名前が昔言っていた。
「私は雪が好きなの。真っ白で、とっても綺麗だから。でも寒いのは大嫌い」
あの時の楽しそうな笑顔は今でも思い出せる。

名前に出会ったらすぐに気づける自信があった。
早く会いたい。

今、彼女はどこにいるのだろう。
もうすぐ降る雪を心待ちにしているのだろうか。





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