22話「女友達」

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「名前さん、傷の方は一生残ってしまうかもしれませんが、命に別状はありませんから安心してください。あと2、3日はこの蝶屋敷で休んでくださいね」

「ありがとうございます」

名前は深々と胡蝶へ頭を下げた。

あの後、甘露寺が胡蝶を呼んでくれた。
それからは甘露寺も名前も顔を真っ赤にしてただただ胡蝶が部屋にやってくるのを待つしかなかった。
冨岡だけは清々しい出立で名前を見守っていた。


「はじめまして、私、甘露寺蜜璃です」
「苗字名前と申します」
「名前さん、もし良かったらパンケーキいかが?」
「ぱんけーき、ですか?私、よく分からないんですけど…」
「あま〜〜い異国の甘味よ〜」
「胡蝶さん、私、ぱんけーきを食べても大丈夫ですか?」
「ええ。でも食べすぎないでくださいね。夕食が食べられなくなりますから」
「は、はい」


女子3人、楽しそうにお喋りをしている様子を冨岡は遠くから見つめた。
あんなに寝ていたのに名前は元気そうだ。

それに名前が笑っているのを見ると自然と自分も嬉しくなる。
これが人を好きになるということなのか。

「あ、冨岡さんも名前さんと一緒にパンケーキ食べますか?」
「俺はいらない」
「じゃあ2人で食べましょうか」
「さっきからとても甘い匂いがするのはパンケーキのせいだったんですね。楽しみです」

名前は甘露寺に任せ、冨岡は胡蝶と部屋を出た。

「蜜璃さんから聞きましたよ冨岡さん。大胆なことをしたんですね。冨岡さんでもそんなことができたんですねえ」
「……普通だ」
「名前さんをあんまり刺激しないであげてくださいね。起きたばかりなんですから」

そんな起きたばかりの人間がパンケーキなど食べても良いのだろうか、と冨岡は口には出さないが不安に思った。

「精神的な面ではまだちょっと目が離せないですねえ。もしかしたら何かの拍子に思い出して、取り乱してしまうかもしれません」
「俺がいるから大丈夫だ」
「……そうですか。じゃあ頼みましたよ」
「ああ」


ちなみにこの一連の事件は胡蝶からお館様、産屋敷耀哉へ報告済みだ。
産屋敷は気を利かせて冨岡には任務を与えないよう配慮してくれている。
冨岡は存分に名前を看病できるのだった。


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