21話「2人の告白」
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「冨岡さぁ〜ん!パンケーキできたんだけど召し上がらない!?」
胡蝶と冨岡以外入らなかった部屋に甘露寺が平気で入って来た瞬間。
名前がゆっくりと目蓋を開けた。
「名前…!!」
「……と、みおかさん?」
冨岡は思わず彼女に覆いかぶさるようにして抱きしめた。
強く強く、彼女の存在を確かめるかのように。
「い、痛い…です」
「!、すまん」
背中の傷のことも忘れていた冨岡は慌てて名前から体を離した。
名前は完全に覚醒したのか、目を大きく開けてボロボロと涙をこぼし始めた。
「冨岡さん、私……」
「大丈夫だ。もうあの男は始末した。ここは安全な場所だ」
「また私、あなたに迷惑をかけて……」
「迷惑じゃない」
「でも…」
上半身を起こした名前の手をもう一度両手で握った。
「すまなかった。おまえを助けられなかった」
「そんな、冨岡さんが来てくれなかったら私…死んでいたかもしれないし」
「傷を…名前に傷を負わせた」
「冨岡さんのせいじゃないです」
今度は名前から冨岡に抱きついた。
先程よりも涙を溢れさせ、震えていた。
「冨岡さん、ありがとうございます。
私あなたと出会えて、本当によかった。私を助けてくれて、ありがとうございます」
泣きすぎてところどころ聞き取れない部分もあるが、そんな名前が冨岡は愛しくて愛しくて仕方なかった。
「俺に一生、名前を守らせてくれないか」
「…え?」
「おまえを失いたくない。もうおまえに怖い思いをさせたくない。悲しませたくもない。俺が、おまえを傷つける全てから守る」
その言葉に名前は言葉が出なかった。
嬉しくて恥ずかしくて、どうにかなってしまいそうで。
ただ溢れる涙を必死に止めようとすることしかできなかった。
冨岡は名前を大切そうに抱きしめ直した。
彼女をこれから先一生守ると決め、心に誓った。
「あ、あの〜〜、しのぶちゃん、呼んできた方が良いかしら?」
「!!!!」
「そこにいたのか甘露寺」
名前はそこで初めて甘露寺が部屋の入り口に立っていることに気がついた。
冨岡もそうだったらしい。
それまで一部始終を見ていた甘露寺は顔を真っ赤にして茫然と立ち尽くすしかなかったのだった。