23話「勘違い」

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名前が目を覚まして2日目。
身体の傷を診察するために名前は裸になっていた。
そのため部屋に冨岡はいない。
胡蝶と2人きりだ。


「胡蝶さんは、冨岡さんと長いのですか?」
「まあそうですねえ。任務もよく一緒になります」
「冨岡さんは…責任を感じやすい方なのでしょうか」
「…?なにかありました?」


風呂に入れない名前のために胡蝶はあたたかいお湯と布で彼女の体を拭く。
今日はいつもより元気がなかったが、冨岡義勇の件で悩みがあるようだった。

「私が男に襲われたことを自分のせいだと思っているようで…」
「はあ」
「私のことを一生守るって言ってくれたんです」


胡蝶が後々に冨岡から聞いた時、名前に求婚したと言っていた。
たしかに「一生守る」とはそういうことだと胡蝶も思った。
まあ分かりづらい気もするが結婚の申し入れの言葉としては男らしくて良いのではないかと思っていた。
もちろんそんな褒め言葉は冨岡に言わなかったが。


「夫婦でもないのに…。ただの隣人なのに変に関わってしまったせいで冨岡さんに責任を負わせてしまって私、申し訳ないんです」
「……」
「これから冨岡さんも良い人に巡り合って結婚しますよね。その時、私なんかが居たらとんだ邪魔者です」
「……」
「私のことを気遣って、あんな言葉をかけてくれたんだと思います。胡蝶さん、私は大丈夫だからそんなに責任を負わないでほしいと伝えてください」
「…なるほど」

どうやら名前はあの台詞が結婚の申し込みだと気づかなかったようだ。
たしかに「結婚」という言葉は出て来ていない。

「名前さんは冨岡さんをどう思っていらっしゃるのですか?」
「私は……冨岡さんに恋をしてしまいました。本当はずっとずっと一緒にいたいです」
「なら良いじゃないですか」
「でも冨岡さんは私のことなんて好きではないと思います」
「冨岡さんは好きでもない女性に一生守るとは言わないですよ」
「……やっぱりそれは私が襲われたことを負い目に感じて言ったんだと思うんです!」

これははっきり言わないと分からなそうである。
冨岡義勇も面倒な男だが、なかなかに名前も面倒な女らしい。

胡蝶はとりあえず「わかりました」と名前を宥め、別室で待機している冨岡の元へ向かった。


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