-63 私の家族

※娘視点






父、煉獄杏寿郎が立ち上げた剣術道場は昔から人気で、私が小さい頃から家には知らない人たちがたくさん出入りしていた。
それでも父の厳しい指導によってすぐに居なくなってしまう門下生も多い。
母は少し心配しているようだったが、祖父がそれで良いんだとよく言い聞かせていた。


師となるのは父の他に祖父と、たまに顔を出す父の弟である千寿郎さん。どちらかと言うと千寿郎さんは実践ではなくて言葉で丁寧に教えるやり方だったから、結構人気だった。

父は若い頃に負った傷のせいであまり全力で体を動かすことはできない。片目も見えない。
それでも強いことはみんな知っていた。


私も5歳になる頃から他の門下生に混じって剣術を教えてもらうようになった。
それから早11年。
女らしい体つきになってきても尚、男に混じって剣を振るう私を父も母も最近心配する。

「美々子が良いのなら反対しませんけれど…ねえ、杏寿郎さん」
「うむ…いや、俺も決して反対しているわけではない」

困ったように笑う母の隣で難しい顔をする父。

「父上、何が不満なのですか」
「……正直に言おう。門下生の中におまえに色目を使っている男が何人かいる。俺は父親として少し心配になる」
「…誰ですか」
「名前は言わん。それは相手に悪いだろう」
「わかりました」
「ん!?何が分かったんだ、おい、美々子!」


父のことは無視していつも通り道場へ向かう。
今日の師範は父ではなくて祖父の日だ。

たまに、傷を負った腹部が痛む時がある父はこうして休みの日を設けている。
本人は不甲斐ない!と稽古に出ようとするが母が鬼の形相で阻止するから父も素直に言うことを聞いて屋敷の方で休んでいる。
今日はちょうどそんな日なのだ。


先程の父の話。
もう目星は付いている。
最近やたらと私に絡んでくる男が3人程いるのだ。
どれも似たような、どこにでもいる凡人共。
はっきり言って興味がないし、何かされたとしても今の私なら相手に打ち勝つだろう。
けれど父は私のことを未だにか弱い少女と勘違いしている。
まあ、姉弟の中で女が私しかいないから溺愛する気持ちも分かる。
(弟たちももちろん可愛がられているが)
なら、私に良い考えがあった。


「私、自分の父よりも強い殿方と結婚するのが夢なの」

そう言い放った。
その日から3人の男共は今まで以上に必死に稽古に励んでいるからおもしろい。
その3人はもうこの道場に通って5年以上経つから、根性がある方だ。
この内の誰かが、本当にあの父に勝つことはあるんだろうか。
もし、勝つ者が現れたら。
本当にお付き合いしてみても良いかもしれない。



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