-16 乙女

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彼女は甘露寺蜜璃さんと言って、元杏寿郎さんのお弟子の方らしい。
千寿郎君が客間ではなく縁側にと言うのでそちらへお通しした。

「これ、お土産です」
「ありがとうございます」
「今から3人で食べませんか?」
「でも…」
「蜜璃さん!お茶を淹れてきました」
「やったあ!ありがとう千寿郎くん」

2人が当たり前のように縁側に座ってお茶を啜るものだから、私も真似して隣に座る。
彼女に促されて包みを開けると草餅やみたらし団子など、美味しそうな甘味がたくさん入っていた。
そういえば、前に杏寿郎さんも土産だと言って桜餅を持ってきてくれたな…

「今日は煉獄さんいらっしゃらないのね。近くに用事があったから寄ってみたのだけど…」
「申し訳ございません。生憎主人は任務に出ておりまして…」
「もう名前さんったら!お堅いのね。あの、失礼なことお聞きするけど、いくつなの?」
「私ですか?17です」
「うそっ、ほんと?私と同い年ね!」
「そうなのですか?」

彼女の年齢に驚く。
まさか私と同い年の女の子が鬼殺隊だなんて。
食べていた草餅を噛まずに飲み込む所だった。


「兄上、蜜璃さんに結婚したとまだお伝えしていなかったのですね」
「私、自分の呼吸を見つけたの!だからちょっと最近忙しくて…師範に、あ、煉獄さんに全然会えてなかったのよ」
「最近蜜璃さんが全然遊びに来ないので、ちょっと寂しかったです」
「やーん、ありがとう千寿郎くんっ」


2人の話を聞いていると自分が部外者のような気持ちになってしまって、思わず俯いた。
杏寿郎さんはこんなに可愛らしい人がお弟子さんだったなんて。
しかもよく遊びに来ていたなんて。
ふくよかで魅力的な甘露寺さんの身体をついつい自分の身体と比べてしまう。
何もかもが劣っている気がした。


「それより名前さん!煉獄さんとの馴れ初めは!?私、そういうお話大好きなのっ」
「馴れ初め…と言いましても、実は親同士が決めたようなもので。しかも急だったのでまだ杏寿郎さんとは1週間も一緒にいないのです」
「まあ…!そうなの」

目の前の女の子はどれだけの時間を杏寿郎さんと共にしたのだろうかと、つい考えてしまう。
嫉妬と言うのだろうか、この気持ちは。
杏寿郎さんは彼女のことを何と呼んでいるんだろう。
心臓の辺りが重くなるような感覚に胸を押さえた。


「でも素敵ね!これから2人とも、お互いへ恋をし合うのね」
「…杏寿郎さんは私のことを好きになってくれるのでしょうか」
「なるわよ!きっと!だって名前さんとても素敵な方だもの。まだ出会ったばかりだけど分かるわ」

突然私の両手を握り、真剣な眼差しで私を見据える甘露寺さんはどことなく杏寿郎さんに似ている気がする。





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