-02 紅蓮

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私の生家、苗字家は代々女の子どもしか生まれず婿をとって繋いできた。
ある時たまたま、煉獄家出身の男が婿養子として迎えられた。
彼はとても人に好かれる性格だったと聞いている。
商人として成功し、苗字家は田舎町の中でも有名なお屋敷へと成長した。

しかし私の父の代に世代交代してから急激に衰退。
プライドが高く頑固だった父はそれが気に入らなくて周りには見栄を張って生きてきた。


そんな時、私は町の貧乏でどうしようもない男と恋に落ちた。
どうしようもないけれど、優しくて強くて良い男だったのだ。
父はもちろん許さなかったし激怒した。

私は4姉妹の中で3女で、1番大人しく特に目立った特技もなかった。
周りに自慢するところがない娘だからなのか、父親から嫌われている自覚は前からあった。
だから尚更気に食わなかったのだろう。

それでも常にだらだらと生きている父親は目立って酷い嫌がらせをするわけでは無かったため、1年はお付き合いを続けることができた。
このまま彼とずっと一緒に生きていくつもりだった。
なのに…。


現煉獄家の当主、煉獄槇寿郎の妻が亡くなったという噂を父が聞きつけたのだ。
しかもそのせいで酒に溺れ、今では鬼狩りも辞めてしまったと聞く。
家にはその息子2人と父親1人で女手がなく、荒んでいるらしかった。

そこで父は勝手に1人で煉獄槇寿郎様の元へ行き、私を息子の1人に嫁がせると直談判したのだ。
槇寿郎様があっさりと承諾してしまったせいでその3日後には苗字家を追い出された。

煉獄家と苗字家は列車で1日かかる距離である。
母も父の味方をし、私は両親によって無理やり煉獄家にやってきた。

愛していた男には別れすら伝えられなかった。
今頃心配しているだろう。
だが彼が私の家に出向くことはできない。
仕事もろくにせずに家でぐーたらとしている父が目を光らせているからだ。

連れて来られる時にずっと父親に強く握られていた左手首は赤くなってしまった。
しかも自分の夫になる男は鬼狩りとして忙しくしているらしく、全く会えていない。
こっそり帰ったところで、両親が怒るのは目に見えている。
今度こそ父親に何か酷い仕打ちを受けるかもしれない。
もうここまで来たら諦めるしかないと心を決めて、煉獄家で住み始めて3日。
とうとう夫である煉獄杏寿郎に会った。

思っていたよりも凛々しく、勢いよく燃える紅蓮の炎のような独特の雰囲気に圧倒された。
それを悟られまいと必死に取り繕う。


杏寿郎様に呼ばれて向かい合って座る。
槇寿郎様からはあまり詳しい説明をしてもらえなかったらしい。

愛した男がいたことは伏せて、それ以外のことは全てを正直に話した。
その間彼はどこを見ているのか分からなかったが、なぜか自分の心を見透かされるような気がして恐ろしかった。



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