17. I want a kiss from you

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「冨岡さん冨岡さん」
「…」
「無視ですか?」
「…」
「ねーねー、あの名前さんって方、もしかして恋人なんですか?」
「…違う」
「なーんだ。お薬屋さんなんて、とっても興味がありますね。ぜひ一度じっくりお話をしてみたいです」


胡蝶もやはり女子なのだなと思った。
女はみんな恋愛話が好きだと前に名前から聞いた。
どこどこの誰が誰と駆け落ちしたとか、友人の誰が婚約しただとか。
よくうっとりとした顔で語っている。


「…名前はそんな関係ではない」

でも、友人?家族?
一体なんなんだろうか。


名前が嫌がらないことを良いことに何度も抱いてしまっている。
精神的に不安定になると名前を抱く。
そうすると気持ちが安定する。
もうその一連の行為が習慣化してしまっているのだ。


でも自分たちは夫婦でも恋仲でもない。
これでは名前が惨めになってしまうのではないか?

何度も考えたが答えは出ない。
俺が名前も守れたらいいのに、やはり名前に頼ってしまう。
彼女に会うと気持ちが楽になる。

名前はどう思っているのだろうか?
先ほど隣を歩いていた男の方が良い男だと彼女が感じたら、俺との関係は消滅してしまうのか。


走りながらまた考え続ける。
それでもやはり不安定になると自然と名前の家に行ってしまう。

自分はなんて最低な人間なんだ。


○○○


「あれ、義勇!本当に久しぶりだね。2ヶ月ぶり?」
「…すまない」
「あはは、何で謝るの?」

我慢に我慢を重ねた結果、初めてこんなに期間を空けることができた。
だが結局また名前の元へ来てしまった。

いつも通り、彼女は明日売りに行くであろう薬の整理をしていた。
隣にそっと座るとそれだけでも憂鬱な気持ちが晴れて来る。


「この2ヶ月とちょっと、気分が悪くならなかったの?」
「…ああ」
「そう。治ってきてるのかな?よかった」
「おまえは何もなかったか」
「え?うん。いつも通りだったよ」
「そうか」
「でも、全然義勇が来ないからちょっと寂しかったな…」
「…」
「あと、死んじゃったのかなって、すごく不安だった」

名前の声が震えた。
俯いていた顔を上げて驚く。
名前がポロポロの涙を流し、静かに泣いていたのだ。


「ご、ごめんね…。私、つい」
「いや…」
「元気そうで良かった」

泣きながらも優しい笑顔を向けてくれる名前。
胸がぎゅっと切なくなる。

名前が好きだ。
どうしようもないくらいに。



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