-40 真実

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通された部屋は和室で、一応食事が食べられるようだ。
ただとても広くて何人も座れるように座布団と長机が用意されている。
この部屋は多分宴会用だ。

襖と仕切りがあって、そこを少し開けると食堂のカウンターでお茶を飲んでいる伊黒先生がちょうど見えた。


「あの、いいんですか?こんなことして」
「神崎はうちの生徒だ。んでここは神崎の実家。今度この店に飲み会しに来るって条件で協力してもらった」
「へ、へえ…」


とりあえずやることもないのでじっと伊黒先生を見守った。
特に何も頼まずにお茶をすするのみ。
何をしているんだろう?
誰か待っているのかな?

そう思っていた時、カラカラと店の玄関が開く音が聞こえた。
「いらっしゃいませー」と元気な声と、聞き覚えのある声が同時に聞こえた。

「伊黒先生!」
「…甘露寺、奇遇だな」


「み、蜜璃ちゃん?」

現れたのはまさかの甘露寺蜜璃ちゃんではないか。
彼女は当たり前のように伊黒先生の隣に座った。


「今日もいつものを頼むのか?」
「ええ。ここの天丼とってもおいしいんだもの!
伊黒先生もいつもの?」
「ああ。それより甘露寺、前も言ったかもしれないが2人きりの時は先生を取ってくれないか…」
「あっ!ご、ごめんなさい!そうだったわ!伊黒、さん…」
「なんだ?甘露寺」

ぽぽぽっと蜜璃ちゃんの顔が赤くなる。
私も同じように赤くなる。
まるで自分と煉獄さんのようだ。

そして名前を呼ばれたときの蜜璃ちゃんの顔。
うっとりと、蕩けそうだ。


あれ…?
好きな人は、高校の先生で……


「…そのブローチ、つけてくれているんだな」
「ええ、もちろんよ!大好きな猫だし、それになんたって伊黒さんがプレゼントしてくれたんだもの」
「…そうか」

伊黒先生も耳が赤くなる。
見ていてもどかしいほど2人は甘い雰囲気を醸し出している。


「…あ、あの2人は?」
「あー、こういうのなんて言うんだっけか?両片想い、ってやつ?」
「な、なんで私の言った子が蜜璃ちゃんって分かったんですか?」
「煉獄にそれらしい女がいるか聞いた」
「……」


えええ…
それってどんな風に聞いたんだろう?
色々不安要素はあるが、でも今夜宇髄先生が私に何を伝えたいのかが分かった気がする。

「甘露寺がおまえに言った煉獄大好き発言はloveじゃなくてlikeだぞ。確実に」
「…」
「証拠が目の前のアレだ」

視線を伊黒先生と蜜璃ちゃんに戻す。
2人は運ばれてきた天丼とうどんを美味しそうに食べていた。
幸せそうに笑う蜜璃ちゃんの顔は、たしかに恋をしている女の子の顔だった。



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