-39 夜のお忍び大作戦

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それから何を宇髄先生に言われたのか覚えていないが、なんとなく慰めてくれたのは覚えている。
とりあえず落ち着きを取り戻し泣き止んで、キメツ学園を後にした。
家に帰ってスマホを開くと、宇髄先生からメッセージが届いていた。


『明日の夜19時に美術室に来い』
『生徒もいねぇし事務員も帰ってる。しら〜と入って来れば大丈夫だ』

『あの、なんでですか?』

『いいから来い』
『来なかったらおまえは一生後悔するぞ』


そのメッセージを最後に連絡は途絶えた。
その日の夜は考えに考えぬいて、結局あまり眠れなかった。



次の日。
結果的に私は定時に帰り、19時10分前にはキメツ学園まで来てしまった。
スゥーっと深呼吸をして気合を入れる。

こっそり職員玄関から侵入し、薄暗い廊下を突き進んで灯りの付いた美術室へ。
中には絵を描いている宇髄先生がいた。
可愛らしい女性3人が描かれている。

「お、来たな」
「こんばんは…」

くるりと振り返って、宇髄先生は笑う。
素早くキャンバスとイーゼルを準備室へ乱雑に放り込み、ジャケットを手に取る。

「おまえ、車?」
「いえ、徒歩です」
「オッケー。飯は?」
「まだですけど…」
「ちょうどいいわ」
「…?」


そのまま付いて来い、と言われて来た道を戻る。
誰かとすれ違うかなとヒヤヒヤしたが、特に誰とも出会わずに玄関まで出て来れた。

「ここで少し隠れるぞ」
「はい?」

玄関にあるちょっとした庭の茂みに宇髄先生はしゃがみ込んだ。
私が怪訝そうに見下ろしていると手で早くしろと合図され、仕方なく同じようにしゃがむ。


じっとそこに隠れて数分後、見覚えのある人が出てきた。
綺麗な髪と色白の肌。
ぱっと見女性と間違えるような美しい先生。

「えっと…?あれは」
「伊黒だ」
「あ、伊黒先生」

かなり前に煉獄さんとお話ししていた人だ。
彼が校門を出るとすかさず宇髄先生が立ち上がる。

「追うぞ」
「追う?伊黒先生をですか?」
「ああ。ばれないようにな」

ここまで来てしまったらもう後戻りできない。
今は宇髄先生の言うことを聞いておこう。

2人で伊黒先生に気づかれない程度の距離を空けて追跡する。
こんなことしたことないからドキドキ。
ちょっと楽しい。


近くのコンビニを通り過ぎてしばらく行くと、定食屋さんに伊黒先生が入っていくのが見えた。
一緒に中に入るのかと思えば、まさかの裏手へ連れて行かれた。
そして当たり前のように裏口の扉を開ける。

「神崎、悪いな」
「もう。宇髄先生…これっきりですからね」

裏口の扉の前で腕を組んでどっしりと立っている「神崎」と呼ばれたツインテールの可愛い女の子。
話がついているらしく、私と宇髄先生はお客さんたちからは死角になる部屋へ連れて行かれた。



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