-15 先生の連絡先
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煉獄先生は自分のであろうノートパソコンを取り出してパチパチと何か打っている。
彼の指をよく見ると長くて綺麗だ。
そして男らしい手はかなり大きい。
当たり前なのかもしれないけれど、その男らしさに胸がぐっと締め付けられるような思いだった。
そんな私に気づかない煉獄先生。
パソコンをこちらへ向けて画面を見せてくれた。
「今購入を考えてるものだ」
「はい」
「定価が8万。このサイトだと6万数千円なんだが、これより安くできるか?」
「頑張ります!任せてください」
「威勢がいいな。わかった、じゃあ見積もりを頼もう」
「わかりました!」
張り切って手帳に品番をメモする。
正直ネットの価格に勝てるかは怪しい。
でもそこは私も伊達に4年営業をしていない。
帰ってからさっそくメーカーに当たってみよう。
「これが俺の連絡先だ」
「あっ、はい…」
「何かあったらこっちに電話してくれ。学校に電話するより俺に直接繋がる方が楽だろう」
そう言って手渡された紙。
たぶん煉獄先生のメモ帳から千切られたものだろう。
そこに彼の電話番号が書かれている。
「これ、もらっていいんですか?」
「ん?ああ」
「あの、ありがとうございます」
「宇髄のも貰っただろう」
「それとこれとは違いますよ」
「謎だな」
ははは、と軽快に笑う煉獄先生の顔を直視できない。
電話番号をもらえただけでこんなにドキドキしてしまうなんて学生時代に戻ったようだ。
恋愛なんて久しぶり。
しかもここは学校だ。
「連絡しますね」
「ああ。頼む」
よいしょ、とソファーから立ち上がると煉獄先生も一緒に腰を上げた。
「急がないからな」
「分かりました!でも今週中にはお返事しますね」
社会科準備室の前で見送られて玄関に足早に向かう。
まだドキドキする。
ポケットに入っている紙切れ。
そこに書かれている煉獄先生の連絡先。
電話するとあの声が聞こえるんだ。
車に戻って声にならない声をあげる。
「〜〜〜、ついに手に入れてしまった…」
それに仕事を貰えた!
煉獄先生のためにも頑張ってうんと安くしよう。
がぜんやる気が出てきた。