5時間目:モテモテな先生

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ついにバレンタインデーがやってきた。

今日家庭科の調理実習があるクラスではチョコレートケーキをみんな作った。
もちろん男子も。

女子は元々用意していた本命、義理チョコを配り、調理実習で作った方はそれぞれがお気に入りの先生にプレゼントしている。
もちろん自分でチョコレートケーキを食べる子もいる。
私は自分で食べる方だ。

モテる先生たちは色んな生徒にたくさん同じチョコレートケーキを貰って困惑しているだろう。
ただ、トッピングだけは色々な種類があったからまだマシかもしれない。

私は大好きなクルミをケーキに入れて作ってみた。
冨岡先生には本命チョコがあるし、これは自分で食べようかなと思っていた。


「名前は冨岡先生にあげないの?」
「しのぶは誰かにあげるの?」
「私は姉にあげるわ」
「ああ、なるほど…」

席が隣のしのぶは姉である胡蝶カナエ先生にあげるらしい。
シンプルなチョコレートケーキだが、上にミントが乗っていて爽やかで美味しそうだ。

「お昼に自分で食べようかな」

今日のお昼は本命チョコをあげるためにも冨岡先生の昼食にお邪魔しようと思う。
昨日家で必死に作ったチョコパイスティックだ。

手も汚れにくいし、先生はきっとたくさんチョコをもらっているだろうからビターチョコで、しかも少なめにしておいた。



昼休み、いつも通りに階段では冨岡先生がパンを食べていた。
よく見ると傍には牛乳とチョコレートケーキ。
やはりもらっていたか。

「先生、そのケーキいくつ貰いました?」
「…8つ」
「うわあ」
「ケーキ以外のチョコは今のところ24個だ」
「相変わらずすごいですね」

隣に座って私も自分で作ったケーキを包から出し、食べようと口を開けた時だった。

「は?」
「え?なんですか?」

冨岡先生が目を丸くしてこちらを凝視していた。

「おまえはくれないのか…?それ」
「え…はい」
「……そうか」

もしかして私が普段あまりにも好き好き言っているから、私からもらえるのは当たり前だと思っていた?
だとしたら冨岡先生めちゃくちゃ可愛い。

「我ながら美味い!」
「…そうか」
「先生も他の生徒からもらったやつあるんだからそれを食べたら良いじゃないですか」
「……」

先生はケーキに手をつけず、いつもの菓子パンにゆっくり齧り付いた。

「先生、私からはこれです。受け取ってくれますか?」
「!」

カバンから手作りのチョコパイの入った包みを取り出すと、先生は子どものように目をらんらんとさせた。
かわいい。

「くれるのか!」
「はい。本命チョコです!」
「…苗字」
「でも先生、たくさんもらってるから…甘いものってたくさん食べるの大変ですよね?無理しないでくださいね」
「苗字のチョコ以外は全部家族に分けてやるから心配ない」
「そうなんですか…」

先生、その言葉はどう受け止めたらいいんでしょうか。







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