4時間目:先生との時間

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部活中に骨折していた足が、そろそろ本格的に治ったようだ。
骨折中に大会は過ぎてしまったため、私はもう部活に行く必要はない。
特に部活に熱い思いがあるわけではないから、むしろ大事な時期に骨折できてラッキーだった。


治ってしまった。足。
もう体育に参加できてしまう。
冨岡先生とのデート(ウォーキング)もなくなってしまうと思うと今日の学校が憂鬱で仕方がない。

わざと朝の漢字テストを70点にしてしまった。
また放課後に冨岡先生が来てくれるかもしれない。


「またか。どうした、漢字、苦手じゃないだろう」
「先生に会いたくて」
「…月曜から金曜まで会ってるだろう」


案の定、放課後に漢字練習をしていると冨岡先生はやってきた。
前みたいに私の前の席に座って、ルーズリーフを覗き込んでくる。

「落書きするな」
「だってー」
「ねこか?」
「犬です」
「…宇髄先生に絵を教わった方がいい」
「先生ひどくないですか?」

これはあえて崩してかいた絵なのに。
先生こそ豊かな感性になるべきだ。


「どうした。悩みでもあるのか」
「なんでですか?」
「今日、元気がない」
「私ですか?」

コクリと先生は頷いた。
私の気持ちを探っている様子がいつもとは違って可愛い。
通常の堂々とした態度の冨岡先生とちょっと違う。


「部活のことか。今治っても、もう遅いだろう…」
「そうですね。でも私、全然気にしてないです部活のことは」
「では何故…」
「体育の授業が憂鬱だからです」
「!」

冨岡先生はかなり驚いた様子で、顔を強張らせていた。

「もう、先生と一緒に歩けないから…」
「…苗字」

思わず俯く。
言葉にするとやっぱり悲しかった。

「俺と話したいならいつでも呼べばいい」
「…こうして放課後とか?」
「ああ」
「でもそれはやっぱり禁断の恋みたいで嫌です…!他の人に見られたらきっと先生に良からぬ噂が流れちゃいます」
「俺のことは気にするな」
「私が気にします!」

私があまりにも感情を表に出してしまったせいか、先生は見るからにしゅんとしてしまった。
前にもこんなことがあったような。


「でもまあ、お昼にまた会いに行けるし。毎日会えるし。卒業して会えなくなるよりずっとマシです。
残りの学校生活できるだけ楽しみますね」
「…ハメを外しすぎるなよ」

あと半年も先生と一緒にいられない。
私たちは卒業する。
寒くなってきた今、すごくそれを意識してしまう。


「先生、私、高校の先生になりたいんです」
「苗字が?」
「はい。そしたら冨岡先生にまた会えるかもしれないし」
「…そうだな」
「科目は地学で」
「また珍しい科目を選んだな」
「おもしろいですよ地学」


夢を語るのは恥ずかしい。
でも冨岡先生が珍しく微笑んで聞いてくれたのがとっても嬉しかった。





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