2時間目:スパルタな先生
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朝、ぼーっとしているといつの間にか冨岡先生が来ていて、朝の学習プリントを回収していく。
クラスや学年によって朝行う学習は違っていて、毎日読書のクラスもある。
私のクラスは冨岡先生が考えた漢検準2級レベルの漢字の小テスト。
日本人なんだから漢字を覚えろ。
先生のクラスになってはじめてのホームルームで言われた言葉だ。
この小テストで70点以下の場合、間違えた漢字を100文字ルーズリーフに書いて冨岡先生に提出しなくてはいけない。
空き時間にやるしかないのだが、なんせ1つの漢字を100文字。
1文字が10点だから50点を取ると漢字5文字を各100文字。
めちゃくちゃつらいのだ。
基本的に出る漢字の範囲は教えられるので、その範囲の漢字を覚えれば簡単だ。
でもその範囲を確認しないとたまに70点以下をとってしまう。
「おい苗字、なんだこの点数は」
「人生で初です」
「…ちゃんと100文字書いて俺に提出しろ」
「…はい」
そして私はなんと今日、30点だった。
予習した範囲を間違えたのだ。
空き時間にやっても終わらず、結局放課後に残ってやることにした。
手首はくたくたになるし、もう下を見なくても漢字をかけるようになってしまう。
グラウンドで部活中の生徒たちを眺める。
友達の胡蝶しのぶの姉、胡蝶カナエ先生が何やらグラウンドの片隅でしゃがみ込んでいる。
私と同じで不思議に思ったのだろう、数学の不死川先生がどこからともなく現れて覗き込んでいる。
胡蝶先生が振り返る。
手には大きなカエルが乗っていた。
もしかして授業で使うのだろうか…そんなまさか。
不死川先生が驚いて飛び上がっているのが見えて、思わず笑ってしまった。
「なにを笑ってる。苗字、できたのか」
「あ、冨岡先生。部活は?」
「……おまえを見に来た」
なんて優しいんだろう冨岡先生は。
そのまま私の前の席に腰をかけたのでびっくりする。
放課後の教室に想い人と2人きり。
こんな少女漫画のようなシチュエーション、ドキドキする。
「おまえがはじめてだ」
「えっ、え…はじめて?なにが、ですか?」
「こんな点数をとったのがだ」
「ああ…」
冨岡先生は言葉足らずだ。
どきりとする台詞だったよ今のは。
「おい苗字、書き順がおかしいぞ」
「綺麗にかければよくないですか?」
「そういう問題ではないだろ」
「でも男子で書き順はちゃんとしてるけど汚くて全くなんて書いてあるか読めない人とかいません?それは良いんですか?」
「……よくない」
「でしょ?」
ちょっとしゅんとした冨岡先生が可愛い。
目の前に先生がいるから、もっとゆっくり書こう。
この時間が永遠に続けば良いのに。
「先生が同じ学生なら良いのに」
「なんでだ」
「だから、先生と恋愛したいから」
「今したらいいだろう」
「先生と生徒の禁断の恋は趣味じゃないんです」
「そうか」
なんだか今の冨岡先生の言葉、よくわからなかったんだけど、どういう意味で言ったの?