1時間目:先生の優しさ

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私の担任の先生は若い。
だから最初、クラスの男子は担任の冨岡先生に馴れ馴れしい態度をとってばかりいた。
でも冨岡先生は本当はとんでもないスパルタで、みんなを一気に震え上がらせていた。

あんなにぼんやりしているのに、怒る時の迫力はすごいし、意外とイケメン。
私は今、とてつもなく冨岡先生が気になっている。


でも、私の中で「生徒に手を出す先生はクズだ」という思いが強い。
だから両思いになって付き合いたいと思う反面、私なんかを好きになって付き合おうなんてことになったら冨岡先生を軽蔑してしまいそうなのだ。

悩ましい毎日である。


「どう思います?私のこの考え」
「……当の本人にする話じゃない」
「冨岡先生以外に相談なんてできないんです」


体育の時間は私の大好きな時間だ。
なぜなら冨岡先生とデートができるから。


陸上部の私は数ヶ月前に足を疲労骨折し、現在体育と部活をお休み中である。
体育の時間は週に3時間だ。
2時間は月替りにスポーツをするが、残りの1時間は学校付近をランニングで体育の授業が終わってしまう。

走らないが何もすることがなくなってしまう私のために、冨岡先生は2人でウォーキングすることを提案してくれた。

私のリハビリにもなるし、冨岡先生もサボって歩いているやつがいないかしっかりチェックできるからお互いに都合が良いのだ。


冨岡先生は私のためにすごくゆっくり歩いてくれる。
体育の授業中、しかも週に一回1時間は私と冨岡先生の特別な時間。
デートなのだ。


自然といつも車道側を歩いてくれる冨岡先生にきゅんとする。
自分と先生の影が並んでいるともっときゅんとする。


「先生って意外と背が高いですよね」
「なんだ意外とは」
「だって、見た目的には低そう」
「……」

いつも通り、心外そうな顔をしてくる。
このデート中の冨岡先生はいろんな話をしてくれるし、私の話も聞いてくれる。


「冨岡先生って恋愛経験あるんですか?」
「その質問は3度目だ」
「そうでした?」
「ああ。ある程度ある」
「詳しく教えてください」
「いやだ」


また今日も冨岡先生の恋愛事情を聞けず仕舞いだ。
あと3週間後にまた同じ質問をしてみようかな。


「…そういえば苗字の足はいつ治るんだ?」
「あと4ヶ月くらいです」
「そうか。長いな」

本当はあと3ヶ月と言われているけど、仮病を使って4ヶ月ほどは長引かせようと計画している。


「冨岡先生は骨折したことあります?」
「ある」
「え!?いつですか?」
「小学1年生の時と、中2の時」
「ええ…小さい先生気になります。年下の先生とか、絶対に可愛い」
「……」

またそうやってうんざりした顔をする。
でもそんな冨岡先生の横顔がたまらなく好きなのだ。






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