◎ 聖川真斗の場合
「まぁくんその背中のなあに?」
「何かついているか?」
「いや…気のせいかな。蝶の羽みたいなのが見えた気がしたの。私がまぁくんを綺麗って思いすぎたのかも」
えへへ、と笑うと彼も照れたように微笑んだ。前までは緩んだ顔は恥ずかしいと見せてくれなかったが「まぁくんの笑った顔好きだなあ」と言うと見せてくれるようになった。
「あのね、まぁくんが蝶なら絶対アオスジアゲハだと思う。黒くて綺麗だもの」
「色だけなら一ノ瀬辺りの方が合っているのではないか?」
「ちがーう!全然わかってないよ!」
ガタッと椅子から立ち上がるとまぁくんは驚いたもののまあ落ち着けと座らせてくる。
「まぁくんはね、強く気高く美しく!なんだよ!まぁくんちょうちょになろう!」
「?俺は人間だが」
「まぁくんのリアリストーー!!!!!」
背中の焼けるような痛みに俺は目を覚ました。脂汗が滲む。
「くっ…」
時計の針は午前三時を指しており俺は誰かを起こすといけないと思い痛みに耐える。荒い吐息だけが部屋に響き一人部屋でよかったとどこか冷静に考えてしまう俺もいた。
「…ぐっ、はぁ、はっ、」
メリメリと音がする。幻聴だろうか?意識が朦朧としてそれすら区別がつかなくなっている。ブチッと身を裂くような音も、痛みも、夢かわからないまま意識を失った。
「まぁくん!すごい!本当にちょうちょになっちゃった!」
「なまえ…?」
「ねぇ、それどうやったの?すごいよ!本物みたい!」
一人はしゃぐなまえの状況が読めず一人狼狽えていると神宮寺が姿を現した。
「あぁ、聖川起きたんだね」
「何故お前がここに」
「落ち着いて聞いてくれ」
相手の真剣な目に反論しかけた口を閉じる。
「お前には蝶の羽が生えた。原因は不明。まだ初期だから身体に影響はないけどこのまま進行すると体が動かなくなる。」
突然の展開に頭がついていかない。ふざけるなと言おうにも神宮寺の目は至極真剣で、今聞かされた事柄が真実だと思い知らされた。
「ねぇまぁくん、まぁくんはちょうちょになるの?」
聖川真斗は背中から蝶の羽が生えてくる病気です。進行すると体が動かせなくなってきます。雪解けの水が薬になります。 http://shindanmaker.com/339665
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