今日は朝から機嫌がいい。鞄の中のアレを思い出しにやにやする。早くお昼休みにならないかな、と思っていたらちょうど12時で、その笑みを私はさらに濃くする。

「なまえちゃん、外行く?」
「実は今日お弁当なんです」

よく一緒にお昼をする先輩に、朝からずっと言いたくてうずうずしていた言葉をぶつける。そう、私は今日、お弁当なのだ。

『早く起きたんで弁当作ったんですけど持ってきます?』

台所の京治くんにいつものように抱きつけばそう言われ、もちろんとぶんぶん頭を振ったのは今朝のことだ。ダイニングテーブルのすみに小ぶりのお弁当が2つ。幸せだなあ嬉しいなあとニヤニヤしていたら「遅刻しますよ」と京治くんに怒られた。

「じゃあ社食行こっか」
「はい!」

先輩とお弁当を広げてまたにまにまする。ごはんと鮭と卵焼きと、アスパラのベーコン巻きと昨日の残りの煮物がすこし。

「手作り?」覗き込んでくる先輩に「彼氏が作ってくれたんです」と自慢すると目を丸くして驚いていた。

「できた彼氏だね、羨ましい」
「ふふ」
「同棲してもう1年くらい?」
「そうです、1年半くらい」

アスパラを口に放り込むといい具合の塩気とアスパラの苦味が広がる。おいしい。会社でも京治くんのご飯が食べれるなんて幸せ。

「結婚とか考えてないの?」
「うーん・・・」
「あっという間に適齢期逃すよ〜」
「あー・・・」

今ところ結婚願望はこれといって無いというのが正直なところだ。でもするなら私もちょっとは家事できなきゃいけないよなぁ。京治くんと結婚・・・。赤葦・・・赤葦なまえ・・・。

「なんか顔赤くない?」
「・・・いや、なんでもないです」

昼間の社員食堂で恥ずかしいことを考えてしまった。それを打ち消すように、ぐっと身を乗り出して先輩に聞いてみる。

「結婚したら今と何か変わるんでしょうか」
「まあ同棲カップルってそこが引っかかって結婚しなくて30くらいで別れるとか多いよね」
「・・・嫌なこと言わないでください」
「んーまあ、子どもとか欲しくないの?」

子ども。小さい子どもは好きでも嫌いでもない。というより「小さい子」とうくくりがあまり好きではない。ああでも、この前生まれたイトコの娘ちゃんはずいぶん可愛かったなあ。

「結婚のきっかけって、その人との子どもが欲しくてっていう人もいるよ」

京治くんとの子ども。やっぱり彼に似てくせっ毛なんだろうか。背は伸びるんだろうか。高校生くらいになったらあんな風な呆れた目を私に向けるんだろうか。

「・・・いいかも」
「おお、逆プロポーズフラグ?」
「えっ!」
「結婚するならプロポーズしなくちゃ」
「そっか・・・」

でもそれならやっぱり京治くんからしてほしい。ベタなところで、海岸で小さな箱を持って私と目を合わせるスーツ姿の京治くんを思い浮かべてみた。

「・・・やばいっすね」
「じゃああんた彼氏に弁当作ってもらってる場合じゃないじゃん」
「!」
「家事もできるようになんなよ〜」

もーらい、と言って卵焼きを1つ持っていかれる。「ん、おいしい!」そう言った先輩に、料理教えてくださいと泣きついたことは絶対に秘密にしなければならない。




 おそろいのお弁当


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